266 昼食会終了
リョウは、昨日アレンが治療されて元気になったことを話す。
「まあ!そういうことだったの」
ヴェローナ、納得がいったようだ。
今度は素直に嬉しさを表す。
「あくまでもアレン様を治療したのは神使タイガ様と闇巫女アレッタ様、
そして聖女様ですので、そのへんはよろしくお願いします」
タイガとアレッタが、リョウとブレンダだということはバレバレで
あるが、それを承知で言うリョウ。
「神使様と闇巫女様ね、わかったわ」
ヴェローナも、それぐらいのことは察している。
リョウが視線を護衛とメイドにやると、彼らも承知したというふうに
軽くうなずいた。
その後も会話をしながら昼食を食べていたが、リョウにはヴェローナが、
微妙にそわそわしだしたように見えた。
「もしかしてアレン様に会って様子を確かめたいのではありませんか?」
それを察してリョウが言う。
「あ、ええ・・・。でも、昼食がまだ済んでないし・・・」
自分のほうから昼食を誘ったのに、そういう勝手は貴族として
出来ないヴェローナ。
「もう十分いただきましたし、食後のお茶とデザートはデートの
続きとして、他の店でとりますので」
こちらはデートを楽しむから気を使わなくていいよと伝えるリョウ。
「そうじゃぞ、アレン殿も会いたいであろうしの」
とブレンダ。
「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら。このお返しは
そのうちにアレンのお礼と一緒にさせてもらうわね」
少し考えてヴェローナは言うが、
「いえ、報酬は十分に頂いておりますのでお気になさらず。
それに私はまもなく王都を離れますので」
そう言うリョウに、
「え?!もっといればいいじゃない。息子たちにも会わせたいし」
と言うヴェローナ。
もちろん、息子というのは、シルフィード王のことだ。
「これでも、いろいろと忙しい身ですので・・・」
正直、王様とは会いたくない。
文明を進めるという目的のために協力してもらう手もあるが、
前回の神界でナミカが言ったように、この国だけ発展させるわけには
いかない。
とりあえず、いくつか他の国にも行ってみる予定だ。
「では、そういうことで。キュアー!!」
リョウは席を立って、酔いを醒ますための魔法をかける。
「まあ!」
「ふみゃっ!」
一瞬で酔いが醒めた感覚に驚くヴェローナとブレンダ。
「では、失礼します」
そう言いながら頭を下げ、ブレンダに手をのばすリョウ。
「ごきげんようなのじゃ」
ブレンダはリョウの手を取って立ち上がり、ヴェローナに挨拶する。
「はい、ごきげんよう」
ヴェローナもあわてて席を立ち、挨拶を返す。
メイドが開けたドアから退室するリョウとブレンダ。
それを見送るヴェローナは、なぜかため息をつき、首を軽く振るのだった。




