265 酔っ払い
一か月ぶりに更新再開です。
3日に1度ぐらいのペースで、のんびりと
やっていく予定です。
「あらぁ~、そうなの~。おほほほ・・・」
「そうなのじゃぁ~、あははは・・・」
ヴェローナとブレンダが楽しそうに談笑している。
「こりゃ!リョウ、聞いておるのか?!もっとわしを大事にしろと
言っておるのじゃ!!」
ブレンダ、リョウの左耳を引っ張りながら文句を言う。
「そうよ~、こんないい娘を、ぞんざいに扱っちゃダメよ~」
そして、リョウの右側では王母ヴェローナがリョウの頬を撫でながら
右耳に顔を近づけて話していた。
耳に息がかかってくすぐったい。
食事会の最初では、丸テーブルに均等に間隔を開けて座っていたのだが、
現在、リョウが2人に左右から挟まれる形になっている。
「うん、失敗した」
ヴェローナに求められるまま作り置きのカクテルも提供してしまった
リョウであるが、酔っ払い2人にからまれる結果となってしまったのだ。
視線で王母の護衛やメイドに『助けてくれ』と訴えるが、どちらからも
目をそらされた。
「リョウ、聞いておるのか?!」
「キイテマスヨ~」
ブレンダの問いに棒読みで答えるリョウ。
「ねえ、リョウ。ゆくゆくは、ブレンダ様と結婚するの?」
ヴェローナ、ぶっこんできた。
「今のところ考えてないですね」
「何じゃと!!」
リョウの答えにブレンダが叫ぶ。
「リョウは、わしが嫌いなのか?!」
涙ぐみながら言うブレンダ。
本当に酔っ払いはどうしようもない。
「いや、好きとか嫌いとかじゃなくて、私はいずれニホンに
帰るつもりですので・・・」
「わしも連れて行けばいいではないか!!」
「無理ですって!」
「連れていくのじゃ~~!」
かぷっ
「あたたっ!」
ブレンダ、リョウのシャツの袖をまくって、腕に噛みついた。
むぐむぐと甘噛みしている。
「リョウはそんなにニホンに帰りたいの?!」
2人の会話を受けて、ヴェローナが聞く。
「そりゃ、家族がいますから。それにここよりずっと文明が進んで
いますので、ここにはないものも多いですし・・・」
腕を噛んでいるブレンダの頭をもう片方の手で撫でながら答えるリョウ。
一番の理由は平和なことだが、それは言わないほうがいいと判断した。
それを聞いてヴェローナは、さっきクライスの治療を見たときから
聞きたかったことを口にする。
「ニホンは文明が進んでるっていうけど、医学もそうなのかしら?」
「そうですね、医療技術と薬学は、この国よりずっと進んでいるのは
間違いないですね・・・」
この世界では聖魔法というチートがあるので、素直にニホンのほうが
上だとは言いづらいリョウ。
ただ、異世界から来たと推測されるとまずいので、下手に
『ニホンには魔法がない』などと言うわけにもいかない。
「実は身内に先天的な障害を持つ子がいて、聖女様でも症状を
和らげることしか出来ないのだけど、一度見てもらえないかしら?」
「「 ん?!!! 」」
どこかで聞いたことのあるようなことを言われ、顔を見合わせる
リョウとブレンダ。
「もしかして、リリエンタール公爵家のアレン様のことですか?」
と聞くリョウ。
「え?!アレンを知ってるの?!!」
驚くヴェローナだが、
「はっはっは・・・、もう手遅れじゃ」
というブレンダの言葉にさらに驚く。
「言葉が違う!」
「ふみゃっ!」
ブレンダの頭にチョップを落とすリョウ。
「『手遅れ』じゃなくて『もう遅い』・・・でもないな。
何て言ったらいいんだろ??」
自分もわからなくなってしまったリョウ。
「え~い!とにかく、アレン様は病気が治って元気になられました!」
「「「 え~~~?!!! 」」」
嬉しい話のはずなのに、わけがわからなくて素直に喜べない
ヴェローナ達であった。




