262 深浦家にて3 前編
「モス買うモス買う、だーいじっなテリヤッキ♪
パ~ンの代わりにレッタッス、HoHoHoHoHoヘイ♪」
能天気な歌を歌いながら深浦家を訪れた者がインターホンの
ボタンを押す。
ピンポ~~~ン
「ども~、にーこーぷの中川ッス~」
中川美香ことナミカが定期連絡に来たのだ。
「あら、中川さん。この前いらしてからまだ一か月たってませんが・・・
まさか?!竜馬に何かありました?!」
リョウの母の真理子が心配そうに言う。
前回からまだ3週間余りしかたっていない。
もしかして竜馬に事故でも?!と心配になる真理子。
「あ、大丈夫ッス、悪いことが起きたとかじゃないッスから。
とりあえず上がらせてもらっていいッスか?!」
「あ、はい、どうぞ」
そう聞いて、ほっとする真理子。
「お邪魔するッス」
客間に通されたナミカ。
リョウの妹の恵も自室からやって来た。
「こんにちは~。中川さん、お兄ちゃんの仕事ぶりはどうですか?」
「恵さん、こんちわッス。
リョウさん、奉仕活動で地域の人に感謝されてるッスよ。
この前も農家さんが困っていた害獣を20匹近く狩ったッス。」
一応、ボムリザードも害獣のくくりに入るはずだ。
「へえ~、お兄ちゃん、罠師の才能あったんだ」
まさか剣と魔法で戦うなんて言えないので、前回そういう感じに
説明してある。
「で、区切りがいいということで一か月たってないけど、
報酬を預かってきたッス」
そう言いながら封筒を差し出すナミカ。
「ありがとうございます・・・え?!こんなに!!」
封筒の中身を取り出して驚く真理子。
一万円札が少なくとも50枚はあった。
「わあ!お兄ちゃん、そんな稼いだんだ!!」
恵も驚く。
「よくやってくれたッスからね。あ、その中から少し恵さんに
小遣いをあげてくれと、リョウさんが言ってたッス」
「お~!お兄ちゃん、気が利くぅ~!褒めてつかわす!」
喜ぶ恵だが、もしリョウがこの場にいたら、『何で上から
目線なんだよ?!』とツッコミが入っただろう。
「でも、こんなに稼げるなんて、危険なことをやってるんじゃ・・・」
真理子がリョウのことを心配する。
「まあ、日本より危険は多いッスが、周りもサポートしてるので
大丈夫ッスよ」
「「 えっ?!!! 」」
ナミカ、失言である。
「お兄ちゃん、外国にいるの?!」
「日本の田舎じゃなかったんですか?!」
2人から即座に問いただしがきた。
「あ・・・」
ナミカは顔を伏せ、どう言い訳するか考える。
「ふっふっふ・・・、はっはっは・・・、あ~はっははっはっ・・・!!」
そして三段笑いをしながら顔を上げて、
「実はそうなんスよ」
思いっきり、居直った。
「連絡不足で申し訳ないッス」
頭を下げるナミカだが、
真理子と恵は、
(お前、全然悪いと思ってないだろ?!)
とツッコミたかった。
「というわけで、リョウさんの命が大事なら、このことは秘密に
するッスよ!」
ナミカは、いきなり悪役みたいなことを言い出す。
「「 ええ~~~~~っ!!!! 」」
いきなりのことに何がどうなってるのか、まるっきり頭の回転が
事態に追い付かない真理子と恵であった。




