258 最後通牒
「なるほど。では、痛い目にあってもらうということでよろしいか?!」
リョウの最後通牒である。
「ハ~~~ッハッハ・・・」
またもや大笑いするクライス。
「この至近距離で詠唱する暇なんか与えると思うのか?!」
「試してみたらどうかな?!」
挑発するリョウ。
「ふん・・・ほれっ」
リョウのギルドカードを投げてよこすクライス。
それをリョウは左手でキャッチする。
その瞬間、クライスはニヤッと笑い、腰に下げていた細剣を
右手で抜いた。
キンッ
だが、クライスが細剣を抜ききる前に金属音がした。
そして彼は根本から先の部分がなくなった剣を振りぬいたポーズで
固まっていた。
リョウが脇差の抜き打ちで、彼の細剣を斬ったのだ。
「なっ・・・」
クライス、何かを言おうとしたが、言葉がでてこない。
「じゃ、痛い目にあってください」
リョウはにっこりと笑みを浮かべながら言うと、脇差の握りを
半回転させ、クライスの右の二の腕を峰打ちにする。
ぼぐっ
鈍い音がして、クライスの腕の骨、橈骨と尺骨と
呼ばれる部分が両方折れた。
「ぐがががぁ~~~!!」
叫び声をあげて倒れ込み、地面をのたうつクライス。
「ぐほっ」
「がはっ」
それとほぼ同時にリョウの後方から変な声が聞こえた。
ブレンダが残りの護衛2人を殴り倒したのだ。
さっき骨伝導でこの2人の処理を頼んでおいたのだ。
「ね、痛い目にあうって言ったでしょ」
脇差を鞘に納めながら言うリョウ。
「きっ、貴様、魔導士ではないのか?!!」
左手で右腕を抑えながら言うクライス。
「魔導士は剣を使ってはいけないなんて決まり、ありましたっけ?!」
と言うリョウに、
「殴ってはいけないなんて決まりもないしのう」
ブレンダがかぶせてくる。
「接近戦をしないなんて、この国の魔導士は甘やかされてるんですね。
しかも剣士のほうもこの程度だし・・・」
さらに煽るリョウ。
(気を使ってこっちから店を出てやったのに、わざわざ追いかけてきて
デートの邪魔をしやがって)
ということで、リョウはまだイラついていた。
クライスは脂汗を流しながら痛みとくやしさに、歯を食いしばっている。
「まあ、『身の程を知れ』ということじゃよ、坊や」
どう見ても自分のほうが若いが、わざと坊や呼びをしてからかう
ブレンダ。彼女もご立腹であった。
「じゃあ、もうお互いに会わないようにしましょうね」
一旦、立ち去ろうとしたリョウであるが、
「んっと、この後追いかけてこられても面倒なので、足のほうも折って
おくかな?!」
立ち止まって振り返る。
「ひっ!」
結果的にフェイントをかけられた形になり、ビクッとするクライス。
ガチャッ
そのとき店のドアを開けてメイドがでてきた。
「お待ちください」
メイドに続いて出てきた女性がリョウに声をかけるのだった。




