233 王都到着
聖女一行の進む先に王都が見えてきた。
御者台に座っているリョウ。
こういうときアニメファンにはお約束である魔法少女のような名前のおっさんの
台詞を言いたかったが、ツッコんでくれる者がいないのでやめた。
先ぶれをだしていたので、聖女一行は待っていた役人に最優先で貴族専用の
城門まで案内される。
順番を抜かされて並んでいる貴族の馬車の列に差し掛かったところで、
マーティアは窓のカーテンを開け、軽く手を振り会釈する。
貴族たちやその使用人たちは、手を合わせたり地面に膝をついたりして
マーティアに敬意を表した。
その間もリョウたちや神殿騎士たちは不審な行動をする者がいないか
気をくばっている。
王都に入るため普通なら、犯罪歴のチェックや税金の支払いなどで時間がかかるが、
聖女一行にそんな必要はないため、ほとんどノーチェックで、数分ほどで城門を
抜けた。
偽物の聖女だったらどうするんだという考えもあるが、まず聖女専用の馬車を
用意することがほぼ不可能である。
そして、リオン隊長をはじめとした神殿騎士たちは、武道大会での活躍などで
それなりに有名人であり、城門の役人とも顔見知りが多い。
そのため、そういう心配はほとんどない。
門を抜けた後、リョウは御者席の後ろの小窓を開けて馬車内のマーティアたちに
話しかける。
「では、さっき言ったように、あとはお願いします。ジュリア、頼むね」
街中は人が多いのでリョウのサーチよりジュリアの視聴覚強化スキルのほうが
有効であるし、リョウより性能的に劣るがマーティアも十分に実用に足りる
サーチが使えるのでリョウがいなくても索敵は十分だろう。
戦力的にも神殿騎士たちだけで過剰なぐらいだ。
いざとなったらブレンダもいるし、マーティア本人のダーク聖女モードもある。
「はい、お任せを。いってらっしゃい」
ジュリアの返事を受けて、リョウは御者に合図して御者台からポンと
飛び降り走り出した。
もちろん、街中なので少し足の速い者が走るぐらいの速さである。
そして数分後、リョウはドミニク商会の前にいた。
もちろん、ボムリザードを届けにだ。
もう夕方なので、一旦協会に帰ってからでは営業時間を過ぎてしまう。
ブレンダたちも来たいと言ったが、ゆっくりと買い物が出来ないので
次回にということで、リョウだけで来たのだ。
店に入って受付で、『依頼されていたボムリザードを狩ってきた』と
取次を頼み少し待っていると・・・。
「リョウォォォ~~!!!!!!」
熊が襲ってきたのかと勘違いするぐらいの勢いでジェフリーが走ってきた。
避けようと思ったリョウだが、それでは周りに被害がでると判断し、
身体強化をかけて受け止める。
ガシっと抱きつかれ、そのまま持ち上げられる。
そして、ス〇ラッ〇ュマ〇ン〇ン・・・ではなくて、
「待ってたぞ!さあ、解体場に行こう!」
ジェフリーに抱えあげられたまま、解体場に運ばれたリョウであった。
「おおっ!これは・・・」
並べられた5匹のボムリザードを見て驚くジェフリー。
近くで見ていた職人たちも驚いている。
「聖女様のご厚意で、狩ったものの中からなるべく質のよさそうなものを
譲っていただきました」
説明するリョウ。
「それは聖女様に感謝しなくてはいかんな。
実際、こんな上質のボムリザードなんて見たことがない・・・
いったい何匹狩ったんだ?」
「15~6匹ですね。残りは値崩れしないように少しずつ市場にだすとの
ことですので、必要があれば協会のほうに問い合わせてください」
「わかった。それで報酬だが、これだけの上物だと支配人にも相談しないと
いかんのだが・・・」
「はい、2~3日後に買い物に来る予定ですので、そのときでいいですよ。
では、失礼します」
「ああ、本当に助かった。ありがとう」
ジェフリーに見送られ、夕暮れの王都の大通りをのんびりと歩くリョウであった。




