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232 王都へ2

残されたアントウェル一行は全員暗い顔をしていた。

このまま帰ったのでは、マリエージュ侯爵夫人にきついお叱りを受けるのは

間違いない。


がっくりと膝をつく初老の男。

「どうしたらいいんじゃ~?!」

思わず叫んでしまった。


「「ペディントン様!」」

男女の従者が心配して駆け寄る。


アントウェル一行の責任者である初老の男の名はペディントンという。

従者の名前は、男がジャード、女がイネスである。


「聖女様相手ですから、仕方ないですよ」

イネスがなぐさめる。


「そうです。第一、あの男にそんな力が本当にあるのでしょうか?」

とジャード。

「たしかにマルティナ様は若返ったようになっていらっしゃいましたが

別の原因かもしれませんし・・・」



「ああ、そのことだが、たぶん本当だぞ」

ペディントンの声を聞いて、近くに来ていたイザベッラ。


「「「 え?! 」」」


「どういういきさつかはわからねえが、俺の幼馴染がその賢者様の恋人に

なっててな。俺を見てもわかるとおり、こういう仕事をしてるやつだから

そいつも身体のあちこちに傷跡があったはずなんだ」

自分の腕の傷跡を撫でながら言うイザベッラ。


「ということは?!」


「ああ、さっき近くで見たんだが、傷跡なんて見当たらなかったし、

きれいな肌ですべすべツヤツヤだった」

イザベッラ、くやしそうである。


「え、すべすべの肌?!」

イネスの目がキラーンと光る。


彼女も26歳、『お肌の曲がり角』を実感していた。

そして、あることを思いつき、提案する。

「ここは、アントウェルに報告するチームと賢者様を追いかけて王都に

行くチームとに分けたらいかがでしょうか?!」


イネスの言ったことに対して少し考えていたペディントンが言った。

「ふむ、なるほど。『ダメでした』という報告ではなく『こういうことが

わかりました。引き続いて調べています』という報告をするということか」


「はい、それで賢者様は女性に甘いように見えましたので、私は王都に

行かせていただきたいです」

イネス、うまくいけば自分も施術してもらおうと思っていた。


「それなら俺も王都チームだな。さっき言ったように幼馴染が賢者様の

近くにいるから都合がいいだろう」

イザベッラも王都行きを希望する。

彼女も何とかして、すべすべお肌を手に入れようと目論もくろんでいた。


「う~む・・・」

考えるペディントン。


その後、2チームに分かれたアントウェル一行は、それぞれの目的地に

向かって出発したのだった。





「ふ~・・・、やっぱり暑いな~」

リョウは、『女子会をするから』と馬車の御者台に移動させられていた。

御者が貸してくれたメキシコの帽子のソンブレロに似たものをかぶっている。


収納バッグからコップを2つ出して、水と氷を入れ、1つを御者に渡す。


女子会の会話が微妙に漏れて聞こえてくるが、こういうものは聞かない方が

精神的にいいのでわざと聞こえないようにする。


初夏の太陽の下、聖女一行は一週間ぶりの王都に向かって進んでいくのであった。


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