23 剛斬丸
夕食後、リョウとガリア一家はサロンに移動して
テーブルを囲んでソファーに座っていた。
リョウは、貨幣の価値と単位について、教えてもらっていた。
テーブルには、ここで使われている貨幣が並べられており、
青銅貨が1シル、銅貨が10シル、大銅貨が100シル、
小銀貨が1千シル、銀貨が1万シル、金貨が10万シルということだ。
主な物の値段を聞いて判断したが、1シルは1円という
感覚で問題ないようだ。
どうせ暮らしていけば、金銭感覚が身につくだろう。
「そして、これは、今回の礼金だ」
説明のため並べられていた硬貨を片付けた後、
シュタイナーが、金貨を5枚重ねたものをテーブルに置いた。
「ありがとうございます」
リョウは、ありがたくいただく。
コンコン
そのとき、ドアがノックされた。
「たぶんレイナね。クラリス、開けてあげて」
アンジェリカが指示する。
「失礼いたします」
アンジェリカが言ったとおり、レイナが部屋に入ってくる。
そして、テーブルの上に皮袋を置く。
「オーガの代金です。80万シルあります。お納めください」
「ありがとうございます」
礼を言ったリョウは、皮袋を開け、金貨が8枚入っていることを
確かめながら、4枚をテーブルに置き、レイナのほうに差し出す。
「お手数かけました、これは解体と輸送などの手間賃として
皆さんで分けてください」
「え、そんなわけには・・・」
と言いながら、レイナはアンジェリカを見る。
「いただいておきなさい」
アンジェリカに言われ、レイナは金貨を受け取る。
「お気遣い、感謝いたします」
そのとき、フェルナンデスがリョウの腕をひっぱった。
「ねえねえ、もういいんでしょ。早く剣を見せてよ」
どうやら、この甘えん坊のほうが彼の素のようだ。
「はい。危ないですから、近寄らないでください」
リョウは立って皆から離れ、収納バッグから剛斬丸を引き抜く。
「「「「 ! ! ! 」」」」
部屋の中にいたもの全てが息をのむ。
あまりに荒々しく、美しい剣であった。
リョウでさえ、改めて見て、
(自分はこんなすごいものを使っていたのか)
と、思った。
右手で柄、左手で剣の峰を持って、シュタイナーたちに
近寄り、しゃがんで剛斬丸がよく見えるようにする。
「銘は剛斬丸と言います。私の国の言葉で、
『強くて硬い切り裂く者』という意味です。
あ、フェルナンデス様、危ないから触るのはナシですよ」
とりあえず、注意しておく。
シュタイナーは、ゆっくりと剛斬丸の切っ先から
柄元までを見て言う。
「すごいな、これならばオーガを両断することもたやすいだろう。
ドワーフの最高の鍛冶師でさえ、作れるかどうか・・・」
「で、いくらなら譲って・・・」
「シュ・タ・イ・ナ・ア!!!」
そして、アンジェリカに叱られたのだった。




