227 ハンバーガー
また使用許可ををもらって、調理室に来たリョウ。
「さて、何を作ろうか・・・」
と、ひとり言を言ったが、
「ハンバーガーがいい」
返事があった。
「わっ!」
驚いて振り向くリョウ。
そこにはエレールがいた。
「なんで、戻って・・・?」
「朝ごはん、忘れてた」
エレールはそう言ったが、実は嘘である。
リョウと一緒にいたときに、ジュリアの気配に気づいたエレールは
去ったふりをして、様子をうかがっていた。
そして、ジュリアがリョウにキスをして自分のキスが上書きされたため、
ジュリアが見ていないところで、さらに上書きするためにリョウに
付いて来ていたのである。
そんなことを繰り返しても仕方がないような気がするが、それが
女ゴコロというものである。
「そっか」
エレールの頭を撫でるリョウ。
「じゃ、ハンバーガーにしようか」
そう言って、調理を始める。
「んっ」
邪魔にならないように、少し離れた椅子にちょこんと座るエレール。
その姿を見て、昔、妹の恵にホットケーキを作ってやったときのことを
思い出すリョウ。
そのときの恵も今のエレールのように座って待っていた。
家を出て(というか、ほとんど強制的に拉致されて)、まだ2ヶ月足らずだが
やさしい母とかわいい妹を思い出し、ちょっとホームシックなリョウである。
なお、単身赴任の父のことは、思い出さなかった。
リョウがエレールに甘いのも、どことなく雰囲気が妹に似ているからだろう。
性格はまるで似ていないが。
マーティアたちと一緒に朝食をとるかと聞いたところ、嫌だと言われたので
先に1人前を作りエレールに食べさせる。
食べ終わった後に、弁当代わりに余分に作ったハンバーグをホットサンドに
したものを紙に包んでエレールに渡したところ、なぜかオレンジジュースも
ねだられた。
そして、今度はリョウの両方の頬にキスをしてエレールは去って行った。
そして、朝食の時間である。
「おほ~~!これも美味いの~~!!」
ブレンダ、相変わらずである。
「ああ、いいな。俺には、これぐらいガッツリしたほうが合ってるぜ」
グレイシアも気に入ったようだ。
「これは・・・あのときの料理をパンにはさんだものですね」
とジュリア。
リョウとデートしたときの夕食にハンバーグを食べたことを
思い出して、エレールのせいでナナメだった機嫌が少し良くなった。
「おいしいですが、ちょっと多いですね。グレイシア、どうぞ」
「おっ、いいのかい。ありがとう、マー様」
ナイフで半分に切って、1つをグレイシアに渡すマーティア。
フライドポテトやサラダもあったので、彼女には朝から重すぎたようである。
「もぐもぐもぐ・・・」
コリーヌは、無言で食べ続けていた。
「まったく、リョウには完全に胃袋を掴まれてしまったわい」
とブレンダ。
「わしと結婚して、胃袋だけではなく、このおっぱいも掴んでみぬか?!」
両腕を組んで、胸を持ち上げる。
「朝からエロネタをするな~~!!!!」
リョウのツッコミ脳天唐竹割りが炸裂した。
本当にブレンダは相変わらずであった。




