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220 爪その2

「うむ、ブレンダ嬢ちゃんはリョウに同行して見聞を広め、魔国の王女として

この国との友好を深めるのじゃ。

シルフィード王家との橋渡しは、すまんが聖女殿、よろしくお願いする」


「かしこまりました」

マーティア、バルディガルに応える。


「それでリョウ、1つ約束をしてくれ」


バルディガルの言葉にリョウは、いったい何を言われるのかと身構えるが。


「ブレンダ嬢ちゃんが魔国に帰るときに、『お主が責任を持って送り届けること』

じゃ。よいか?!」

つまり、リョウもブレンダと一緒に魔国に来い、ということだった。


無理難題ではなかったので、ほっとする。

正直、リョウも魔国に行ってみたかった。

何よりコーヒーを手に入れられるチャンスである。


「はい、承りました」

リョウは片膝をついて頭を下げ、バルディガルに了解の意思を示す。


「やった~!国に帰るまでリョウと一緒じゃ~!!」

そう言ってブレンダは、さらにリョウを抱きしめる。


「ふむ、このままではバランスが悪いな・・・ほれ、親指も頼む」

そう言って、バルディガルは親指だけ立てた右手をリョウの前に出す。


それを見て、脇差を抜こうとするリョウにブレンダが待ったをかける。

「リョウ!戦闘用の剣もあるのじゃろ?!そっちを見せてくれぬか?!!」


「え?!・・・ああ・・・」

言われるままに収納バッグから剛斬丸を抜く。


「「「「「  !!!!!  」」」」」


最近では剛斬丸を見せるのに慣れてしまったリョウだが、初めて見た者に

とっては驚くしかない。


「いきます!」


かけ声とともに、剛斬丸を振り抜くリョウ。

そして頭上で剛斬丸を旋回させた後、収納バッグに入れる。


「「「「「  ?????  」」」」」


バルディガルの親指の爪はそのままで、何もなかったように見えた。


しかしリョウが右手でつまむと、爪だけがすっと持ち上がる。


「ありがたく、いただきます」

そう言ってリョウは、爪を持った右手を顔の前に、左手を腰の後ろに回して

頭を下げる。


「くくく・・・」

笑い始めるバルディガル。そして・・・


「ぐわっはっはっは・・・!!!なるほど、そういうことじゃったか・・・

がっはっは・・・」

大笑いしながら1人で納得していた。


リョウたちには、わけがわからないが下手に聞ける様子ではない。


「リョウ、改めてブレンダ嬢ちゃんを頼むぞ。聖女殿、よろしくな。

嬢ちゃん、元気でな。では、失礼する」

そう言って、背を向けるバルディガル。


リョウたちも頭を下げて見送る体勢をとるが、


「おお、そうじゃ」

振り返るバルディガル。


「リョウ。男と女なのじゃから、いろいろとあるかもしれんが、責任は

ちゃんととるようにな」


「え?!!!」

「じい!何を言うのじゃ!!」


「わっはっは・・・、さらばじゃ!」

戸惑うリョウと怒るブレンダを残して、翼を広げ飛び立った。


悠然と去っていくバルディガルを呆然と見送るマーティア一行であった。

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