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219 爪

「まことに申し訳ありません!」

地面の上で正座して両手をついて、魔族3人組に謝るリョウ。

もちろん、彼らはヒールして治療済みだ。


「あ、いや・・・」

「まあ・・・」

「うん・・・」

魔族3人組、歯切れが悪い。


普段、見下している人族の若者にやられて怒りたいのだが、

「わしが世話になっているのじゃ。許してやってくれ」

と王女のブレンダに言われたらどうしようもない。


しかも、真竜のバルディガルまで

「こいつらのことなんか気にせんでよいわ。なかなか面白い見物みものであったぞ。

ガッハッハ・・・」

なんてことを言う。


「それにしても、なぜあんなことに・・・?」

マーティアがリョウに聞く。


「いやぁ・・・マーティア様たちの近くにドラゴンがいたもので、

お助けするには、高速で踏み込んで一気に首を斬るしかないと

判断したんですが・・・」

リョウは、ばつが悪そうに頭を掻きながら言う。


「近づいたら、話をしてる様子だったので、あわてて止まろうとして

ああいうことに・・・」

そして、改めて3人組に頭を下げる。


それに対して、『何を言ってるんだ?こいつ』という反応の3人組。


剛斬丸のことを知ってる者は『もしかしたら出来るかも・・・』と思ったが、

知らない者にとっては、固い鱗で守られた竜の首を斬るなんて無理だと

思うのが当然である。

まして今回は真竜なのだ。


なので、バルディガルも冗談だと受け取った。

「ガッハッハ・・・、それは危ないところじゃったのう。さすがに首を

斬られてはたまらんので、爪ぐらいで勘弁してくれ」

そう行って、指を軽く曲げて手のひらを上にして右手をリョウの前に

差し出した。


もちろん、爪も鱗と同じぐらい固いので斬れるわけないと思って、

冗談で言ったのだが・・・。


「ふんっ!」


カカカカッ


軽く乾いた連続音が聞こえた。


あまりに自然に目の前に出されたので、リョウは反射的に脇差の抜き打ちで

親指以外の揃って差し出されていた指の爪をまとめて斬ってしまったのだ。



「「「「「「       え?!     」」」」」」



何が起こったのか、理解が追いつかず固まるまわりの者たち。


「あ!!」


そして、やったリョウ当人も自分のしでかしたことに気づき、

右ひざを立てて腰を左後方にひねる『腰をきった』姿勢のままで

固まった。


トトトンッ・・・コロコロ・・・


斬られた爪が地面に落ち転がる。


「わっ・・・」

バルディガルは落ちた爪を見て・・・、


「わしの爪が~~~!!!」

叫んだ。


その場の全員がビクっとする。


「もっ、申し訳ありません!!」

リョウ、ジャンピング土下座である。


「ぷっ・・・あはははは・・・!!」

そして大爆笑するブレンダ。

笑いながら、土下座するリョウに覆いかぶさり、引き起こす。


「なっ!バルじい!面白い男じゃろ?!!」

ブレンダ、リョウに抱きつきながら、バルディガルに紹介する。

リョウの後頭部にブレンダの胸がふにゅんふにゅんである。


その様子を見てバルディガルは、さっきブレンダが言った微妙に

具体的な希望の男がリョウのことであったと察した。


「ふむ・・・リョウと言ったな。ブレンダ嬢ちゃんが世話になっている

そうだのう、礼を言う」

爪を斬られて、思わず叫んだのをごまかすかのように言うバルディガル。


「あ、いえ、それほどでも・・・」

怒ったと思ったのに、友好的に挨拶されて戸惑うリョウ。


「もうしばらく嬢ちゃんの世話を頼む。斬った爪はその代価として納めてくれ」


「「「  え~~~~?!!!  」」」

驚く魔族3人組。


「バルディガル様、ブレンダ様を国に連れて帰るはずでは?!」

そのうちの1人が言う。


「かまわん!グレゴリオにはわしから話をしておく」

グレゴリオとは、ブレンダの父、つまり魔族の王である。


「そ、それでは、わしはまだ帰らなくてよいのじゃな?!!」

嬉しそうに言うブレンダ。


そして、少し離れたところで見ていたグレイシアとジュリアは

『ああ、やっぱりこんなことになってしまうのか』と思うのであった。

1人で『爆笑』はおかしいという説がありますが、

問題ないという説もあります。

私は、問題ないという説をとりたいと思います。


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