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217 バルディガル

「バッ、バルディガ、ル様っ、おっ、おいてけ、ぼりは、ない、ですよ」

息を切らせながら、魔族の1人が文句を言う。


「ふんっ!お主たち程度の者を真竜たるこのわしが、なぜ運んでやらねば

ならぬっ?!!」

バルディガルに冷たくあしらわれる3人。


「あっ!お前達はっ!!」

その3人を見た神殿騎士の1人が言う。

見覚えがあるようだ。


「知っているのか?」

リオンが聞く。


「『王女様に面会したい』とわけのわからんことを言ってきた奴らです。

当然、『そんなものはおらん』と門前払いしましたが・・・」


「いるじゃないか~~!!」

恨みがましい目で見る3人。


「王女だとは知らなかったのだ、許せ。第一、このお方が魔族だとさえ

知らされていなかったしな」

ボムリザードの狩りのときに出会った者たち以外には単に『リョウの知り合い』

ということになっていた。


「まあ、こんな奴らのことなど、どうでもよい」

とバルディガル。


魔族3人が不満そうだが、そんなものは無視でブレンダに向き直る。

「なあ、ブレンダ嬢ちゃんや、わしと一緒に帰ってくれんか?!」


「何じゃ?!バルじいまで、あんな男と結婚しろと言うのか?!」

不満をぶつけるブレンダ。


「そこまでひどいかのぉ・・・少々の妥協は必要じゃぞ」


「じいの感覚はズレておるのじゃ!あんな怠惰なデブは嫌じゃ!!」


種族が違いすぎて、感覚にズレがあるようだ。


「じゃが、身分や財産は申し分ないのじゃろ?!」


「そんなのより、強くて頭がよくて料理が上手くて、ちょっといじわるじゃが

本当はとても優しい男がいいのじゃ!!」


「何じゃ?!その微妙に具体的な希望は?!」


「とにかく、あんな男はごめんじゃ!」


わがままを言う孫とそれを説得する祖父のような会話が続く。


そこに、マーティアが口をはさむ。

「バルディガル様、現在のブレンダ様の保護者のような立場の方がいますので、

その方が合流してから、改めてお話をしたほうがよいかと・・・」


「保護者じゃと?!」

怪訝けげんな顔をするバルディガル。


「そうなのじゃ。名前はリョウと言っての、聖女殿の相談役なのじゃが、

わしもいろいろと世話になっておるのじゃ」


「ふむ、そのような者がおるのなら、挨拶もなしに嬢ちゃんを連れ帰るわけにも

いかんか・・・」

考え込むバルディガル。


そんな彼らの会話をはたで見ているジュリアとグレイシア。

『ウダウダやってないで、さっさと魔国に連れて帰れよ』と

言いたいが、真竜となんか関わりになりたくないので黙っている。


リアルで『逆鱗に触れる』のなんて、まっぴらである。


膠着こうちゃく状態に入った雰囲気の中、


「うわっわわわ~~~!!! どいてくれ~~!!」


という叫び声とともに、高速で走ってきて足をもつれさせたリョウが

文字どおり、転がり込んできた。

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