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214 実演

「「 実演販売?? 」」

バウール・グディーニャ夫婦の疑問の声が揃う。


「そうです。どんなにいい物でも使い方を間違えては意味がありません」

説明するリョウ。

「そこで、お客さんたちの前で実際に使ってみて、いかに便利な物かを

アピールするとともに、使い方を覚えてもらうんです」


「ああ、たしかにただ商品が店にあるだけじゃ、どう使っていいか

わからなくて、買う気なんかおきないねぇ」

グディーニャ、思い当たることがあったようだ。


「なるほど。ちゃんとした使い方がわかっていれば、苦情も少なくなるか・・・」

バウール、両面フライパンのことで苦情がきたことがあるらしい。


「私の国では、一日に何百個も商品を売る実演販売の専門家がいます。

それの真似をしてみますので、ちょっと待ってください」

そう言って、少し上を向いて考えるリョウ。

頭の中で口上を整理しているのだ。


「うん、いいかな・・・いきますよ」

そして、実演販売の真似がはじまった。


もちろん、真似なので実際に作るわけではない・・・。


はずだったのだが・・・。





「何でこうなった?!!!」

現在、10人ほどの主婦に囲まれて、ホットサンドメーカーの使い方を

実演している。


実演販売の真似の最中に訪ねてきたグディーニャの主婦友達が

『ちょうどいいから、皆にも教えてくれ』

と呼び集めたのだ。


パンに具をはさんでホットサンドメーカーにセットしたリョウ。

「火にかけて片面2分です。もちろん好みで調節してください」

そして、火にかけて2分の歌を歌う。


奥様方、リョウの美声にうっとりである。


「と、私はこんなふうに歌で時間を計ってますが、普通は砂時計とかを

使ったらいいと思います」


「そうか?!中が見えないなら時間を計ればよかったのか・・・。

さっそく、知り合いのガラス職人に頼むことにしよう」

バウール、そのことを思いつかなかったことがくやしそうだ。


「はい、焼けましたよ、どうぞ。他の方、もう少し待っててくださいね」

リョウは、焼けたホットサンドを4等分して配る。


「「「「 !! 」」」」


なかなか好評のようである。


結果、奥様方にねだられて、中身の違うホットサンドを何個も作らされて

しまうはめになった。


おかげで、リョウがヴェストン村を出発したときには、昼をとっくに

過ぎていた。


「ふ~~~、参ったな~~~・・・。まあ、収穫もあったからいいか」


気をよくしたバウールが試作品を何個か譲ってくれたのである。


「それにしても、食文化ばかり広めてしまってるな~」

自分の本来の目的を思いなおすリョウ。


ガリアで、お約束の農業改革とかもやるつもりであったが、その前に

王都に呼び出されてしまった。


「まあ、いいか。今は魔族の王女様のこともあるし・・・」

そう言いながら、走る速度を上げていくリョウ。


彼の向かう先では、その王女様に危機が迫っていたのであった。

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