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213 封書

コンコン・・・


「まもなく給水所です」


軽いノックとともに馬車内と御者席の間の小窓が開けられ、御者が休憩・

給水所に着くと知らせる。


街道沿いにある休憩・給水所は、領主か駅馬車組合が管理しており、

無人の小さなものから、小さい村ぐらいの大きさのものまで様々である。


ここは、駅馬車組合が管理する休憩・給水所で、ドワーフの集落に

買い付けに来る商人たちが立ち寄るので、そこそこの大きさがあり、

売店や屋台もある。

今で言えば『道の駅』といったところだろうか。

さすがに、サービスエリアまではいかない。


さすがにこんなところまでに先触れは出していないので、出迎えは・・・

いた!!


売店や屋台の従業員や旅人たちが休憩所の入口のところに並んでいた。


先行していた神殿騎士が彼らに近づき尋ねる。

「この集まりは何のためのものだ?」


「もちろん、聖女様をお出迎えするためのものです」

中年の商店主らしい男が答える。


「先触れを出しておらんのに、なぜ聖女様が来られると知っている?」

油断なくハルバートを構えながら聞く神殿騎士。


確率は低いが、彼らが他国の刺客だという場合もあるからだ。


「先ほどメイフィールド領軍の者だという方が『まもなく聖女様一行が

来られるので、これを渡してほしい』と」

そう言って封書を差し出す商店主。


「そいつは、どんな男だった?」

封書を受け取りながら聞く神殿騎士。

表裏を見て、宛名と差出人を確認する。


「いえ、覆面をしていたので顔はわかりませんが女性でした」


「ふむ・・・わかった。お前達も無理に出迎える必要はない。聖女様は

そういうことは気になさらないお方だ」

神殿騎士はそう言って馬車の方向に戻って行った。




数分後、マーティアたちの馬車が休憩所に着いたとき、出迎えの集団は

解散していなかった。

聖女様をぜひ一目見たいということのようだ。


せっかくなのでということで、マーティアもサービスで『まとめてドーン』の

エリアヒールをした。


そして、現在、休憩所の一室で商店主たちの差し入れの紅茶とお菓子を

いただいていた。


「やっぱりリョウのと比べると、工夫が足りなくて素朴な感じだな」

グレイシアは、そう言いながらお菓子をボリボリ食べている。


「これこれ、比べてはダメですよ」

たしなめるマーティアだが、感想は同じようだ。


「それより、エレールさんは何と?」

ジュリアが聞く。


そう、封書はメイフィールド領軍スカウトのエレールからであった。


「ブカーブ村で私達を・・・というよりブレンダさんのことを

探っていた者がいたということです」

マーティアが封書の内容を説明する。


「わしを?!!・・・ということは・・・」


「ええ、ブレンダさんの追っ手の魔族でしょうね」


「それで、どうするのじゃ?」

ブレンダが不安そうに聞く。

追っ手に引き渡されることを心配しているようだ。


「リョウ様がいないときに勝手に決められないでしょう」

マーティア、とりあえず引き渡す気はないようだ。


「そうですね、現在リョウがブレンダさんの保護者みたいなものですから」

ジュリアも同意する。


「とりあえず王都までは私どもで保護いたします。そこからどうするかは、

ブレンダさんも考えておいてください」

とマーティア。


「そうか・・・すまぬな・・・」

ブレンダ、安心したようだ。


「あと、『最重要』と書かれた項目がありました」

マーティアが真剣な表情で手紙をみんなに見せる。


いったい何が、と全員が身を乗り出して、それを見る。


そこには、


『パイやホットサンドなどを詰め込んだセットを5組用意しておくこと』

と書いてあった。

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