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210 ヴェストン村その9

「はい、どうぞ~。大きいのはグレイシアね」


翌朝、昨夜の侘びとして朝食を作ることにしたリョウ。

いろいろ考えて、オムライスにしてみた。


料理の乗った皿をみんなの前に置いていく。


「おっ、これも見たことがない料理じゃな」

皿に乗った黄色い塊をみて期待に弾んだ声を出すブレンダ。


「包んでいる黄色いものは卵でしょうか?!」

とジュリア。


「はい、こんなふうに薄く焼いた卵で包んだ料理をオムレツといいます。

今回はチキンライスという米と鶏肉、野菜を炒めた料理を包んでいるので

オムライスと呼ばれています」


「では、いただきましょうか」

マーティアが言う。

別にマーティア本人は気にしないのだが、彼女が食べ始めないと他の者も

料理に手をつけづらいので、食事のときはそう言うようにしている。


「お~、美味いの~。ほんと、お主たちと出会えてよかったわい」

パクパクという擬音が聞こえそうな早さで食べるブレンダ。


「まったく、リョウの料理は何でも美味いぜ」

張り合っているのかグレイシアも早食いだ。


「デカ女は相変わらず量が多いのか・・・」

不満げに言うブレンダ。


「食事はちゃんととらないと、空きっ腹じゃ警護は出来ませんからね。

でも、昨夜の罰として王都に帰るまでお菓子やデザートは皆と同じ量ですよ」

リョウが説明する。


「うっ!仕方ない・・・というか抜きじゃないだけマシか」

がっかりしながらも、よかったという表情のグレイシア。


マーティアは抜きにすると言ったのだが、リョウがして

皆と同じということになったのだ。


「それじゃあ、お菓子の量が多いのはわしだけじゃな」

満足げにブレンダは言うが。


「いえ、ブレンダも皆と同じ量ですよ」

リョウが否定する。


「な、何じゃと!!お主、約束をたがえるのか!」


「何を言ってるんです?!あなたが言ったのは『グレイシアと同じ量をだせ』

ということだったはずですよ」


「あ!!!」


「よかったですね。グレイシアがお菓子抜きになっていたら、あなたも

無しになっていたところですよ」


「うぐぐ・・・。リョウ、わしの扱いがだんだんぞんざいになってないか?!

これでも王女なのじゃが」


「何を言ってるんです?!自分で庶民だと言ったじゃないですか!

自分の都合での使い分けは認めませんよ」

リョウ、とても悪い笑顔である。


食後のデザートにリョウが作ったのは、プリンであった。


全員に配っていき最後に

「はい、これはスツーカの分ね」

半分ほどの大きさのものをブレンダの分の皿の横に置く。


「あ!」

それまで不機嫌だったブレンダの顔が明るくなる。


「これなら公平でしょ?!」

リョウの今度の笑顔は普通に素直なものだった。




出発の予定時刻まで1時間半ほど。

リョウは鍛冶のバウールのところに行くことにした。


「もし、予定時刻まで戻ってこなかったら、出発していいですから。

走って追いかけます」


リョウの言葉に、そんなことが出来るのか?と皆が思った、ジュリアを除いて。


「そういえば、リョウの走る速さは、一流の飛脚以上でしたね」

どこか自慢げにジュリアが言う。


「それはすごいですね」

とマーティア。


「そう、初めてリョウと会ったとき・・・」

「スト~~~ップッ!!!」


ジュリアの話が長くなりそうだったので止めるリョウ。


「時間がないので行ってきます。じゃ、後はよろしくっ!」

そう言って、バウールの鍛冶場に向かうリョウであった。

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