203 ヴェストン村その2
ちょっとしたゴタゴタはあったが、マーティアたち一行は無事に
ドワーフの里に迎えられた。
マーティアとリョウを含む数人は村役場に泊まることになっているので
一旦、役場に入る。
残りの者たちは村の広場で野営の準備をする。
チャタム村やブカーブ村では、職人や土属性魔法使いなどが土木作業を
していたが、ドワーフは土木作業も得意なので、当人たちに任せた方がいい。
なので、ここでの奉仕作業はマーティアやリョウたちの治療だけである。
よって、野営の準備が済んだ後は、警備の者以外は夕方まで自由時間となった。
村人の治療も夕方からなので、現在リョウはジュリアと一緒に村の中を
散策中である。
「なぜ、ブレンダさんが付いてきてるんですか?」
ジュリアが不満そうに言う。
「いいではないか?!一緒に散歩するぐらい!それとも何か?!
リョウとHなことでもするつもじゃったのか?」
「ぶっ!」
「えっ!」
思ってもいなかったことを言われて驚く2人。
「ななななな、何を言うんですかいきなり!」
とリョウ。
「そそそそそ、そうですよ!そんなことしません!!」
ジュリアも否定する。
「ならばよいではないか!のう?!スツーカ」
肩に止まっている鳥に同意を求めるブレンダ。
(いや、鳥に聞くなよ?!)
とツッコみたくなったリョウだが、スツーカは『そのとおりだ』とでも
言うように
「クェ~~!!」
と鳴いた。
ということで、ブレンダも加えた3人で村の中をのんびり歩き回る。
金物屋というか武器や防具も扱う金属製品店に入る。
さすがに、種類豊富で質もよさそうだ。
ここは店でもあるが、商人が買い付けに来る卸問屋みたいなものだそうだ。
ここにない品でも注文すれば、対応してもらえるとのことだ。
「お~~~!!これは?!」
リョウが見つけたのは、フライパン2つを蝶番で繋いで、向かい合わせに
重ね合わせて使う物で、中の物をひっくり返さずに両面を焼くことができると
いうものだった。
「あ~、それかい。バウールっていう職人が考えたものなんだけどね。
中が見えないので焼き上がりがわからないということで、評判はイマイチ
なんだよ」
店の女将が説明する。
「当人は『このよさがなぜわからない?!』とか言って、いろんなタイプを
作っては持ってくるんだけどねぇ・・・」
たしかに大きさはもちろん、丸型角型、鉄製銅製、底の浅いもの深いもの
いろいろとあった。
リョウは、その中で底の浅いタイプを中心に見ていく。
「何をやっておるのじゃ?!他所に行くぞ」
ブレンダ、興味がないらしい。
「やはり、あなたはアホですね」
ジュリアが言う。
「何じゃと!!」
「今、リョウが見ているのは調理道具です」
ブレンダに向かって右手の人指し指を立て、もったいぶって言うジュリア。
「ということは・・・」
「ということは・・・」
思わずオウム返しになるブレンダ。
「その道具を使ったニホンの料理が食べられるということです!」
「あっ!!!!!!!」
納得したブレンダ。
「リョウ!そうなのか?どういう料理なのじゃ?!」
リョウの服のすそをツンツンと引っ張るブレンダ。
「道具が同じものじゃないので上手く出来るかわかりませんが、
とりあえず試作して夕食後のお茶の時間に出そうかと思ってますよ」
「お茶の時間ということは菓子なのか?!」
「お菓子ではなくて軽食ですね。いい子にしてないと食べさせてあげませんよ」
ブレンダの額をちょんと指で突きながら言うリョウ。
「ウン、アタシイイコニシテル」
なぜかブレンダ、カタコトである。
結局、リョウはその変形フライパンを3種類買った。
それで作る料理でリョウが一番好きなのはコンビーフを使ったものなのだが、
残念ながらこの国では見たことがなかった。
(まあ、ハムやチーズとかでも充分おいしいかからイイカ・・・)
と思いながら金物屋を出るリョウであった。




