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201 ヴェストン村その1

ドワーフの里、ヴェストン村はわりと近かったため聖女一行が着いた時、

まだ日は高かった。


ここに村が出来たのは、鉄鉱石の鉱床が見つかったからであるが、

獣人の里であるチャタム村と近いというのも利点の1つである。

製鉄で使われる木炭を林業が盛んなチャタム村から仕入れているのだ。


村の入口に出迎えの者たちが並んで立っていたが、女・子供ばかりで

男は1人しかいなかった。


リョウが読んだことのある小説では、ドワーフは女も髭が生えているという

ことだったが、この世界では違うようだ。

見た目、背の低いぽっちゃりおばちゃんという感じだ。

もちろん、男でも子供に髭はない。


「ようこそ聖女様、そしてお連れの方々。あたしは村長のブルーメリーで

ございます」

村長も女性であった。


基本的にドワーフの男というのは鍛冶バカ、狩猟バカで事務的なことは

やろうとしないため、自然と村長や村の職員たちも女ばかりになって

しまったそうだ。


「こちらは、2番工房の親方のダストンです」

1人だけいた男を村長が紹介する。


「ダストンですだ・・・」

紹介された男は、どこかそわそわした感じで自分の名前だけを言った。


「もう、職人の代表なんだからもっとちゃんと挨拶しなよ!」

ブルーメリーが言う。

「ほほほ・・・すいませんねぇ、ドワーフの男は愛想がなくて」


「いえいえ腕のいい職人とは、えてしてそういうものでしょう」

マーティアも気にしてないと伝える。


しかし、ダストンはもう我慢が出来なかったようだ。

「すまねえ、現場が心配なんで失礼する」

そう言って、一礼して走り去って行った。


「あ!・・・ もう、仕方ないねえ・・・」

ブルーメリー村長はあきらめた様子で言う。


「申し訳ありません。一番工房の親方が弟子たちを連れて、出張に行って

しまったもので、人手が足りなくて・・・」


「出張ですか?!」


「はい、依頼されてガリアに行ってまして・・・」


「えっ?!!」

ガリアと聞いて、話に加わるリョウ。

「失礼ですが、ガリアにどんな用事で行かれたんですか?」


「この村出身のガラントという者が、大きい仕事を引き受けて手が足りないので

手伝ってくれないかと、来たんですが・・・」

ブルーメリーが説明する。


「よりによってこの村で一番腕のいい一番工房のアイオロス親方とその弟子

たちを連れて行ってしまったんです」


「ソ、ソレハタイヘンデスネー」

いきなり棒読みになるリョウ。


「何があったのか、親方も嬉々として付いて行ってしまいまして・・・」

本当に困ったという様子のブルーメリー。


ガラントが手伝いを頼んだのは間違いなく大型蒸留器の製造である。

下手なことを言うとまずいことになるかもしれないと思うリョウ。


(それにしても、なぜよりによって一番腕のいい親方が・・・?)

不思議に思うリョウ。

(嬉々として付いて行くって・・・)


「あ!!!」

思わず声を上げるリョウとびっくりする周りの者たち。


「リョウ様、どうなさいました?!」

マーティアが聞く。


「イ、イエ、ナンデモナイデスヨー」

リョウ、再び棒読みである。

ガリアを出る前の日にガラントに渡した物を思い出したのだ。


(そりゃ、あんなドワーフホイホイみたいなものを使えば、たいていの

ドワーフは引き受けるよな~~・・・)


とりあえず、余計なことは言わないと決めるリョウであった。

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