199 帰路
「ブレンダさんも紅茶でいいですか?!」
リョウがブレンダに聞く。
「うむ、それでよいぞ。コーヒーと言いたいところじゃが、この国には
ないのじゃろ?!」
リョウに答えるブレンダ。
「え!!コーヒーがあるんですか?!」
期待で声が大きくなるリョウ。
「うむ、魔国の南西の海岸沿いのごく一部の地方だけで栽培されておる。
そこ以外で栽培しようとしても気候のせいなのか土の性質なのか、全て
失敗しておるそうじゃ。そのため収穫量が少ないので上級貴族ぐらいしか
手に入れられぬがの」
「ということは、魔国に行っても手に入れられる確率は低いか・・・」
一気にテンションが下がるリョウ。
「おい、そんなことより、さっさと食おうぜ!!」
待ちきれなくなったグレイシアが文句を言う。
「おっと、すいません」
そう言って全員分の紅茶を注いだリョウは席につき、手を合わせる。
「では、いただきます」
「何じゃ?それは?!」
とブレンダ。
「うちの国の食事前の作法ですよ。食材になった動植物や作ってくれた人に
感謝するんです」
「おうそうか、ではリョウ、いただきます」
リョウに向かって手を合わせて、いただきますをするブレンダ。
「「「「「「 いただきます 」」」」」」
他の者もまねをする。
「はい、どうぞお召し上がりください」
リョウがそう言うやいなや、皆一斉に食べ始めた。
ガツガツムシャムシャ・・・
「お~~~!うめえ!!」
とグレイシア。
「ふむ、どっちも美味いが、わしは昨日のやつのほうが好みじゃな」
ブレンダがそう言ったが、
「私はこっちのほうが好きです」
マリーが言う。
その他、好みはあるが、ミートパイ、アプリコットパイともに好評であった。
羊肉の臭みを弱めるために、タマネギを加えたのがよかったようだ。
アプリコットジャムを作るための砂糖の代用の水飴は麓のチャタム村で
作られるようになったので、2つの村の交易にも役立つだろう。
「あとは、そちらで工夫して改良してくださいね」
リョウが職員2人に言う。
「はい!がんばります!!」
マリーがそう言うが、主に自分が食べるためである。
「ちゃんとメモしてありますので、大丈夫です」
エリーはマリーより真面目なようだ。
朝食兼試食会も終わり、後は支度をして出発である。
ここでもチャタム村と同じようにマーティアが挨拶した後に聖魔法の祝福を
打ち上げた後、王都への帰路についた。。
王都へ帰ると言っても、その途中で奉仕・救済活動をするためブカーブ村へ
来たときとは、まるっきり違う道を通ることになる。
ブカーブ村は王都の北西方向にあるため、来たときは王都から北へ向かう
街道を通ってカーブを描きながら西へと進み、帰りは南よりの街道を
通ってカーブを描きながら東に進んで王都に入るのだ。
「次の目的地は、どういうところですか?」
リョウが聞くと、
「次の村は、ドワーフの里でヴェストン村と言います」
コリーヌが答えた。
「ドワーフということは、鍛冶が盛んなんですか?」
「はい、近くにある鉄鉱石が産出する場所を見つけたドワーフが住み着いたのが
始まりと言われています」
「なるほど・・・」
コリーヌの話を聞きながら、リョウはガリアのドワーフの鍛冶師ガラントの
ことを思い出していた。
蒸留所建設は、うまくいっているだろうか・・・。
実は、ガリアの蒸留所建設は、とんでもないことになっていたのだが、
その話は、そのうちにということで・・・。




