20 夕食にて
シュタイナーとアンジェリカ、そしてもう1人、
女性が食堂に入ってくる。
シュタイナーの妻のマーガレット・E・ガリアであろう。
「待たせたな、では食べようか」
シュタイナーの言葉で食事がはじまる。
ここでは、特に食事前の祈りや作法はないとのことだ。
リョウは、かるく手を合わせるだけで、『いただきます』は、
心の中で言った。
「リョウ、姉上に続いて、母上まで世話になった。
謝礼は、後でオーガの代金と一緒に払わせてもらう」
シュタイナーがリョウに告げる。
「ありがとうございます。それで、オーガの
代金というのは?」
リョウの質問にアンジェリカが答える。
「オーガの皮は、革製品の高級素材なのよ。
あなたが倒したオーガは、デルムッドたちに解体させて
うちの収納バッグに入れて持ってきたの。
さっきレイナたちに冒険者ギルドに持って行かせたんだけど、
状態がよかったので、いい値がついたそうよ」
「伯母上!リョウはオーガを倒したのですか?!」
フェルナンデスが興奮して聞く。
さっき、パンチを指一本で止められて、
リョウがただものではないと思ったようだ。
「ここに来る途中に襲われてね、護衛が苦戦してたところに
駆けつけて、あっという間にオーガを3匹斬り捨てたのよ」
「3匹!!」
アンジェリカの説明に、フェルナンデスは大興奮である。
リョウを見る目に尊敬の光が混ざる。
脳筋でなくとも、男の子にとって強者は、あこがれである。
「まるで危機を知った神様が助けをだしてくれたようだったわ」
ブフォッ!!!
アンジェリカの言葉に、むせてしまうリョウ。
「神様だなんて、ケホ、おおげさですよ、ケホ・・・」
あまりフォローできていなかった。
「背丈ほどもある白銀の大剣を軽々と振り回し一刀のもとに、
オーガを斬り捨てるさまは、ステキだったわ」
(いや、あんた見てたっけ?!)
心の中でツッコむリョウ。
「まあ、伝説の勇者様みたいね」
(いえ、ただの派遣ニートです。というか、イレーネ様、
話を広げないでください)
「そして、モンスターを撃退した後、護衛たちの怪我を治してくれたのよ」
(気分悪くなって吐いちゃいましたけどね。
食事中だから絶対言わないけど)
「リョウの剣は、そんなにすごいの?!」
フェルナンデスくん、お目目キラキラである。
「ほほう、そんなにすごい剣なら、私も見たいな」
シュタイナーが話に加わってきた。
「譲ってくれとかの類を言わないとお約束して
いただけるなら、お見せします」
とりあえず、釘を刺しておくリョウ。
「ふむ、そんなことはないと思うが、いいだろう。約束しよう」
「ありがとうございます。先祖伝来の品なので、念のためです」
(いや、あんた見たら絶対欲しがるよね)とはさすがに言わない。
「ねえねえ!ボクもボクも見たい!!」
「もちろんいいですよ、フェルナンデス様」
フェルナンデスは一人称まで変わっていた。
「そういえば、君の国は、この国よりも学問や技術が
すすんでいるように聞いたのだが」
シュタイナーは、アンジェリカと密談していた話の核心に入る。
「そうですね、いろいろな所を見ないとわかりませんが
だいぶすすんでると思います。」
数百年は違いますとは言わないリョウ。
「その知識や技術をここで役立てるようなことは可能なのかな?」
出来るだけなにげなく言うシュタイナー。
「いいですよ」
あっさり了承されたのであった。
お互いの目的が、ガッチリ合ってしまいましたw




