196 デコピンふたたび
マーティア、リョウ、ジュリアそしてブレンダはテーブルにつき、
コリーヌが紅茶を淹れる。
グレイシアは用心のためマーティアのななめ後ろに立っていた。
「茶菓子はアップルパイを所望じゃ」
と、ブレンダが言うが、
「こんな時間に食べるには重すぎますよ」
そう言いながら、大皿にポテチをだすリョウ。
「何じゃ?これは!」
「私の国で人気のお菓子ですよ。ポテトチップスといってジャガイモを薄く
切って油で揚げて塩味をつけたものです」
リョウはそう言って、ポテチを1枚摘み上げ食べてみせる。
パリパリ・・・
それを見て、ブレンダもポテチを1枚とる。
「歯ごたえがよさそうじゃの・・・」
ポテチを目の近くにもってきて確認するように見た後、そう言って、
口に入れる。
パリパリ・・・
「ふむ」
気に入ったようで、さらに摘んで食べる。
パリパリ・・・パリパリ・・・パリパリ・・・
連続で食べ続ける。
パリパリ・・・パリパリ・・・パリパリ・・・
そして、皿は空になった。
「んっ?!なくなったぞ。お代わりじゃ!」
リョウの前に皿を差し出すブレンダ。
「ね~~~よ!!というか1人で全部食うな!!」
リョウが叫ぶ。
「んっ、わしにそのような口をきいていいのかの?!」
ブレンダ、態度がデカい。
「どういう意味かな?」
「先ほど、そちらの聖女殿が言ったじゃろ?!ブレンダ・アウグストと」
「それで?」
「アウグストとは、魔族の王家の家名じゃ」
「それで?」
「いや、じゃから、わしは王家の者じゃと!」
「それで?」
「え??!!」
リョウ、右手の中指を曲げて親指で支え、ブレンダの顔の前に出す。
「何じゃ?」
不思議そうな顔のブレンダ。
リョウの指を見て、寄り目になっているのがちょっとかわいい。
バコン!!!
「ぐはぁ!!!」
リョウのデコピンをくらって椅子から転げ落ちるブレンダ。
もちろんチャタム村の狼獣人のガスパールにやったものよりずっと手加減
していたが、それでもブレンダは、痛さのあまり床の上を転げまわる。
「何をするのじゃ!!」
数分後、立ち直ったブレンダが叫ぶ。
額に赤くデコピンの跡がついていた。
リョウ、『インド人か?!』とツッコみたかったが誰もわかるわけないので
「いや、ムカついたもので」
とだけ言う。
「ム、ムカついたじゃと!そんな理由で王族のこのわしに対し・・・わっ!」
あわててリョウから離れるブレンダ。
リョウが、また右手を前に出してデコピンの体勢をとったのだ。
「お、お主、王族さえも気にしないとは、いったい何者なのじゃ?!」
ブレンダが、両手でオデコをガードしながら聞く。
「ただの平民ですよ。というか、私の国に貴族なんていませんし」
「貴族がいない?!そんなバカな!!それでは政治が出来ないではないか!」
リョウの言ったことが信じられないブレンダ。
「まあまあ、とにかく落ち着いて話をしましょう」
マーティアが場を仕切りなおす。
「お2人ともお座りください」
マーティアの言うことに従って席につくリョウとブレンダ。
そして、リョウは、とりあえずお約束のニホンについての設定を
話すのだった。




