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19 密談

「国民全てが貴族?!」

「とりあえず、そういう考え方をしたほうがいいということね」

領主の執務室で、シュタイナーとアンジェリカが話をしていた。


オーガの件については、すでに冒険者ギルドに調査を依頼済みで、

明朝から領軍が街道の警備を強化するとのことだ。


そして今は、リョウについて話している。


義務教育9年、普通は+3年で実質12年、さらにその上にも

学問を志す者が学び研究する制度があるという。

また学問よりも技術を学びたい者には業種による専門的な

学校まであるというのだ。そのため、徒弟制度は、

なくなる過程にあるという。

その結果による知識や技術の蓄積は、どれだけのものになるのか。


「姉上は、彼の言うことが本当だと?!」

あまりのことに、素直には信じられないシュタイナー。

「ある程度本当だとは思っているけど、重要なのはそこじゃないわ」

アンジェリカが本題に入る。


「少なくとも彼は剣と治癒魔法は超一流。それだけでも

有用だけど、たぶん私達の知らない知識や技術を持っているわ。

私達に有用なものがあれば、その知識や技術を提供してもらうのよ。

そのときの交渉の心構えとして、貴族を相手にしていると

考えたほうがいいということね」


「なるほど」

シュタイナーも納得したようだ。


「それならば、しばらく彼にはここに留まってもらうことにしよう」

「ええ、ちょうどいいことに、お母様に気に入られたみたいだから

相手をしてもらってもいいかもしれないわね」

「ああ、そのうち、私と試合をする機会もあるだろうしな」

やっぱり、脳筋である。


「ほんとに、あなたは・・・」

ためいきをつきながらも、アンジェリカは今回は

少しあきれたように言うだけだった。


「しかし、これは難しい問題だぞ。どうやって、技術提供させる?」

有用な知識や技術は富を生み、他者に対して有利な状況を作れる。

だから、古来から職人はその技術を秘伝として限られた者だけに

伝えてきたのだ。


「まずは、お約束の、金・地位・女でしょ。あの子、お人好しっぽいから

人情というのもあるけど、そのへんは仲良くなってからでしょうね」

脳筋シュタイナーも世話好きおばさんアンジェリカも

中身はしっかりと貴族である。


「ボソボソ・・・地位を・・・ボソボソ・・・男爵・・・」

「ボソボソ・・・女・・・ボソボソ・・・レイナ・・・ボソボソ・・・」

その後のリョウに技術提供させるための密談は、

まるで悪代官とエチゴ屋のようであった。

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