188 ブレンダ
リョウは、ブレンダに対して油断は出来ないと思っていた。
彼女が現れるまでリョウのサーチに反応がなかったのだ。
ということは、彼女はリョウのサーチをかいくぐる隠密スキルの
ようなものを持っているか、一気に距離を詰める高速移動ができるか、
空間を転移するスキルのようなものを持っているか、それとも・・・。
いずれにしても相当な実力を持っていると推測していた。
そして、それは正しかったようだ。
「ほれ!さっさと突かんか!!」
ブレンダの背中の翼が変形し触手のようにボムリザードに絡みつき
拘束していた。
体長3m余りの個体が空中で固定されている。
しかも、心臓を突きやすいようにリョウたちに腹を向けて。
リオンが、今度こそはと慎重に狙いを定める。
ここまでお膳立てされてはもう失敗は出来ない。
「きえぃ!!」
気合をこめて突く!!
ザシュッ!!
・
・
・
爆発しない。
成功である。
「うおおおォーーー!」
面目を保てた喜びに右腕を高く上げリオンが吼える。
「やったぞーーー!!!」
「ほれ!喜んでないでさっさと狩ってお茶にするぞ!!」
そんなことはどうでもいいとせかすブレンダ。
「あ・・・ああ・・・」
突き上げた右腕を力なく下ろすリオン。
「次はあっちですよ」
リョウは、下手なことを言うとまた誤解されるかもしれないと、リオンを
放置して狩ったボムリザードを収納バッグに入れ、サーチした次の獲物の
方向を示す。
「その広範囲のサーチといい、この岩場を苦もなく移動出来る体術といい
お主、なかなか有能だのう」
そう言うブレンダも岩場をぴょんぴょんと軽いステップで移動している。
「器用貧乏なだけですよ」
軽くかわすリョウだが、ブレンダがステップするたびに上下動する胸を
さりげなく見ている。
マーティアほどではないが、充分に巨乳である。
とりあえず、心の中で拝んでおく。
「ま、待てよ!お前ら、身軽すぎるだろう?!!」
リオンが息をきらせながら付いてくる。
そう言いながらもそれなりの重量があり動きに邪魔な防刃コートを着て
付いてこれるのだからリオンもなかなかのものである。
リョウは冒険者スタイルだが、レザーアーマーは脱いでいた。
グレイシアは、狩りは3人にまかせてマーティアたちの護衛についている。
「おっ!いたいた」
ボムリザードを見つけたリョウ。
「よしっ、まかせておけ」
そう言ったブレンダは変形した背中の翼を岩の隙間を通してボムリザードに
近づける。
そして枝分かれした翼は、頭・胴体・尻尾に巻きついてそのまま持ち上げ、
ボムリザードを空中に固定した。
足をバタバタとさせてもがくが、胴体は静止している。
追いついたリオンが狙いを定めて突く。
ズシュッ!!
今回も成功である。
コツをつかんだリオンはさらに3匹に止めをさした。
「すみません、次からは私にやらせてください」
リョウが言う。
「ああ、お手並みを見せてもらおうか」
もともとリョウが狩る予定だったし、5匹狩って満足したリオンは素直に
承諾した。
「ほほう、お主がやるのか・・・?!」
興味深そうにブレンダが言う。
どうやらブレンダは、リョウが剛斬丸でボムリザードの首を切り落として
いたのは見ていなかったようだ。
リオンが失敗したときの爆発音を聞いて、やって来たのであろう。
そして、次のボムリザードを見つけて、今までと同じように空中に固定する
ブレンダ。
リョウは腰に下げた脇差を抜き、剣先をボムリザードに向けて右腕を引き
半身に構える。
「ふんっ!」
声と共に脇差を突き出し、同じ速さで引く。
びくんと一瞬痙攣したボムリザードはそのまま絶命した。
「ほう・・・」
感心したような様子のブレンダ。
そして、さらにリョウが4匹に止めをさしたところで狩りは終了したのであった。




