183 パイとパイ
タイトルを見てHなことを考えてはダメですよw
「折ってたたんでまた折って~♪のばして~折ってまたたたむ~♪」
変な歌を歌いながら、水で練った小麦粉を麺棒でのばすリョウ。
ここは、村役場の厨房。
リョウは、ジュリアに朝ごはんをねだられ作っていた。
ジュリアにまだ食べさせていないもので、何かないかと考えて、
ミートパイとアップルパイにした。
ミートパイは朝ごはんに。
アップルパイは、『疲れたときには甘い物』ということで、今日の
ボムリザードの狩りで、昼ごはんか休憩のときにだせばいいと
考えたのである。
現在は、パイ生地作りの最中で、食べたときの食感をよくするために、
たたんで伸ばしてを繰り返して生地に層を作っているところである。
「リョウ様、こんなところでいいでしょうか?!」
村役場の女職員(名前はマリー)」が聞く。
厨房の仕様許可をもらいに行ったところ、手伝うので自分も食べさせてくれと
言われたのだ。
彼女には、アップルパイの具のリンゴを煮込んでもらっていた。
「あ、いい感じですね。じゃ、次はそちらの仕上げをお願いします」
「はい」
リョウに言われてマリーは、鍋をリョウの側に置き、竈の前に戻って
ミートパイの具を煮詰めはじめる。
リョウは、7cm×12cmほどの長方形に切ったパイ生地を土台にして、
ふちに土手を作り、煮たリンゴ、いわゆるコンポートを入れる。
蓋の部分は生地を細く切ったものを網目状にクロスさせ重ね合わせる。
単に縦横に重ねてもいいのだが、見栄えがいいように互い違いに
交代に上下になるように編みこむ。
これを10個作ってオーブンに入れる。
編みこみで手間がかかってしまい、変なことにこだわるんじゃなかったと
少し後悔するリョウ。
次は、ミートパイである。
こちらの具は、包丁で叩いてミンチにした肉と細かく切ったトマトを炒め、
ローリエ、塩、コショウ、すりおろしたショウガなどを入れて煮たものである。
アップルパイを成形している間にマリーが煮詰めて水分をとばしてくれた。
ローリエを取り出し、アップルパイと同じようにパイ生地に乗せ成形する。
アップルパイとの区別がつきやすいように、こちらの蓋はパイ生地に切れ目を
入れただけの簡単なものにする。
アップルパイが焼けたら、オーブンから取り出し、ミートパイを焼く。
あとは、紅茶とポテトサラダでいいだろう。
リンゴのコンポートとミートパイの具は、わざと多目に作っておいた。
コンポートはデザート関係でいろいろと使えそうだ。
ミートパイの具は、パンに乗せたりはさんだりしてもいいし、パスタに
からめればミートソーススパゲティだ。
収納バッグに入れておけば、保存もOKである。
「リョウ~~~、遅いぞ~~~、腹減った~~~」
グレイシアが文句を言うが、どことなく甘えている感じだ。
確かに手間がかかったので、作り始めて1時間半ほど経っていた。
「はいはい、どうぞ、ミートパイですよ~~」
そう言いながら、マーティアから順に配膳していくリョウ。
マリーも手伝っている。
「こちらは手伝っていただいたマリーさんです。ご一緒させていただいても
いいですよね?!」
「もちろんです。どうぞ、お座りください」
マーティアが許可をだす。
「グレイシアは、少し多目にしたけど足りなければこっちのパンをどうぞ」
リョウはそう言って、パンの乗った皿をテーブルの中央に置く。
グレイシアの皿には、多めに盛ったポテトサラダとミートパイが1個半
のっていた。
「お~ありがと。いかにも手間のかかってそうな料理だな!」
半分に切られたミートパイの断面を見ながら言うグレイシア。
「マーティア様、早く食べましょう」
待ちきれないコリーヌ。
「はいはい。では、いただきましょうか」
待ちかねていた皆は、マーティアの言葉で、一斉に食べ始めるのだった。




