182 乙女と恋愛
(恋愛は自由か~・・・)
自分で言っておいて虚しくなるマーティア。
聖女であるマーティアにとって、自由どころか恋愛そのものが禁止である。
創造神であるライゼンはそんなことは決めていないのだが、すべての者に
平等でなくてはならないという立場もあり、教会という組織が成立し力を
持つにつれて自然とそういうふうになっていった。
実際過去に、美男を使って・・・という、俗に言うハニートラップ?!
みたいなものがあったそうだ。
そのときは、大事になる前に処理された(どういう処理の仕方だったかは
不明であるが、その美男が行方不明になったことだけは伝えられている)が、
それ以降さらに厳しくなってしまった。
現在、リョウが聖女の側にいるのも問題ではあるのだが、聖女が正式に
冒険者ギルドを通して依頼したことと、リョウの恋人はジュリアで
あるとの認識、そしてリョウの『賢者』としての知識とお人好しな性格
などによって問題が表面化していないだけである。
実際、リョウにとってマーティアは妹のように感じているし、マーティアに
とっても同じ創造神の加護を持つ身内のような感覚である。
「マーティア様、ただいま戻りました」
リョウを引きずったままジュリアが報告する。
「ご苦労様」
マーティアはジュリアにそう言った後グレイシアの方を向く。
「そちらも上手くいったようですね」
「あ、は、はい・・・」
グレイシア、顔真っ赤である。
ドサッ
「ぐふっ」
ジュリアがリョウを廊下に放り出す。
「リョ、リョウ様もお疲れ様でした」
マーティア、リョウにねぎらいの言葉をかけるが、笑顔が微妙にひきつっている。
「は、はい。ただいま戻りま・・・え?!」
起き上がろうとするリョウを壁に押さえつけるジュリア。
「ジュ、ジュリア!何を?」
驚いてリョウが聞くが、ジュリアは無言でリョウの体勢を整える。
壁を背にして尻を床について、足を投げ出した格好にさせられたリョウ。
ジュリアはその足を広げその間に入り込む。
リョウ、なすがままである。
そしてリョウの股の間に後ろ向きに座ったジュリアは、リョウの両腕をとって
自分の首にからませるようにした。
リョウに後ろから抱きしめられたような体勢になったジュリアは、
身体をリョウにもたれかからせる。
(あ!そういうことか!!)
リョウ、やっとジュリアの行動を理解した。
拗ねて、甘えているのである。
「マーティア様、今夜はジュリアと一緒にここで護衛をしますので」
そう言って、ジュリアの首にからんでいる片方の腕に軽く力をこめ、
もう片方の手でジュリアの頭を撫でるリョウ。
リョウには見えなかったが、ジュリアのぷくっと膨れていた頬が
しぼみ、口元に笑みが浮かんだ。
「・・・わかりました。コリーヌ、グレイシア」
マーティアはそう言って、コリーヌが開けたドアを通り2人と一緒に
部屋に入って行った。
グレイシアは、リョウとジュリアをちらっと見た後、ゆっくりとドアを
閉めるのだった。




