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171 再び水飴

「ふ~~~・・・、ひどい目に会った・・・」

風呂から上がったリョウが思わず愚痴っぽいことを言う。

ただ、その顔つきは何となくまんざらでもないような感じである。


1時間ほど前、野営する予定の広場で聖女一行は炊き出しをして、

自分達も一緒に夕食をすませた。


そのときに、リョウは子供限定で水飴を木の棒にからめて配ったのだが、

待ちきれなくなった子供たちがリョウに飛びついてきた。


獣人は子供でも身体能力が高いのと、子供に怪我をさせてはまずいと

リョウは子供をかばったため倒れてしまい、持っていた水飴を顔や首筋に

こぼしてしまった。


それを獣人の子供達にペロペロ舐められたのである。


犬系の子はまだしも、猫系の子は舌がザラザラで、舐められた

ところがちょっとヒリヒリしたが、ヒールしたし、可愛かったので

よしとすることにした。


身支度を整えたリョウは、風呂に入りながら考えたことについて話しに

村長に会いに行った。




そして、村長の協力を得て、リョウは村長の家の厨房に、獣人の女性

4人とともにいた。


「これが子供達の言っていた水飴ですか」

「これをこの村の特産物にしたらどうかということですね?!」

水飴を味見する獣人たち。


「はい、砂糖より甘みは弱いですがずっと安く作れますし、そのまま

お菓子として食べてもいいです」


林業以外にとくにたいした産業のない自給自足のような田舎の村だ。

当然、気の利いたお菓子などほとんどない。


「作り方そのものは、そんなに難しくないんですが、いろいろとコツが

いるので、それをお教えしようかと。急なことですみませんが、私達は

明日の昼にここを発つ予定ですので」

そう言いながら、道具と材料を並べていくリョウ。


「これが一番のポイントです」

そう言ってリョウが見せたのは、芽のでた種を乾燥させたものであった。


「何ですか?これは」


「麦の種を発芽させて乾燥した物でモルトというものです。ラガーや

エールを作るときにも使われる物で、私は蒸留所から譲ってもらいましたが

自分で作ってもいいですよ」

ガリア領のハタクック醸造所で譲ってもらったものである。


「大事なのは発芽させることで、保存のために乾燥させていますが

すぐに使うなら生でもかまいません」


モルトを手に取って、よく見たりいだりする獣人たち。


「では、まずジャガイモを石臼いしうすですり潰します」

よく洗って適当な大きさに切ったジャガイモを潰していく。


この4人の獣人の女性たちは、主婦や未亡人なので料理に慣れているため

手際よく作業がすすんでいく。ちなみに、1人は村長の奥さんである。


すり潰したジャガイモに水を加え、煮てデンプンノリを作り冷ます。


「温度が高すぎると水飴にならないし、低いと出来るまでの時間が

長くなります。触れるけど、触り続けたら火傷するな、という感じの

温度と覚えておいてください。これぐらいの温度ですね」


触って温度を確かめたリョウは、同じように獣人たちに触らせて

覚えてもらう。


「あとは、すり潰したモルトを加えてよくかき混ぜ、一晩待ちます。

ということで、明日の朝、また来てください」


水飴の素が入った鍋は、村長の奥さんに管理してもらうことにして

解散した。

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