17 イレーネ
コンコン・・・
クラリスがドアをノックして告げる。
「アンジェリカ様と治癒師の方が参りました。」
向こう側からドアが開き、メイドっぽい女性が
3人を招き入れる。
アンジェリカ、リョウ、クラリスの順で入室し、
クラリスがドアを閉める。
室内には、ベッドに横たわった女性がいた。
アンジェリカの母のイレーネだろう。
「お母様、ご無沙汰しております。お加減はいかがですか」
アンジェリカが挨拶する。
「アンジェリカ、よく来てくれたわね。また腰をやっちゃったのよ。
司教様に来ていただいて、少し楽になったんだけどね」
痛そうに腰をさするイレーネ。たぶん、ギックリ腰だろう。
「お母様、リョウを紹介するわ。高レベルの治癒魔法の使い手で、
護衛たちの怪我を治していただいたの」
「リョウです。遠い他国から来ましたので、無作法なことが
あるでしょうが、ご勘弁いただけるとありがたいです」
アンジェリカの紹介に続き、リョウが挨拶する。
「アンジェリカの母のイレーネよ。遠い他国ってどこかしら?」
「海の向こうのニホンという国です。
とりあえず、先に治療をしたほうがよいと思いますので、
そのへんは、後ほどに」
さっさと終らせて、この屋敷から出たいと思っているリョウである。
「お体を触らせていただくことになりますが、よろしいでしょうか」
「ええ、お願いするわ」
「では、うつぶせになってください」
許可をもらい、治療をはじめる。
まず、腰に両手をあて、魔力でサーチし患部をさぐる。
筋肉にしこりと炎症があったが、骨のほうには異常はないようだ。
これなら、すぐに治ると判断し、ヒールをかける。
確認のため、もう一度サーチすると、しこりと炎症は消えていた。
「いかがでしょうか、ゆっくり起きてみてください」
「え?!もう」
腰に手をあてて、3分とたっていない。
リョウは、イレーネに手をかしながら起こす。
「痛くない」
イレーネが答える。
問題ないようだ。
「ゆっくり歩いてみてください」
メイドに靴を履かせてもらい、リョウに手をとられながら
歩くイレーネ。
さらに腰を曲げたり、足を屈伸したりして確かめる。
「治ってる・・・わ・・・ね」
イレーネはそう言いながら、リョウのほうに向きなおり、
「あなた、いったい何者なの?こんなすごい治癒魔法見たことないわ」
と問いただす。
「そう言われましても、出来るから、としか言いようが・・・」
神様から特訓を受けました、と言えるはずがない。
まあ、素質もあったのだが。
「では、アンジェリカ様、報酬を頂いて、失礼したいのですが」
リョウはアイテムは持たされたが、お金は持たされていなかったので
このままだと宿に泊まれなかった。
収納魔法バッグに簡易キャンプセットは入っているが、
せっかく街に来たのに野宿をしたくない。
「何を言ってるの。あなたの国のことを聞かせてくれる約束でしょ。
とりあえず、今日はここに泊まりなさい。」
リョウの左腕を抱え込み、逃がさないと言わんばかりに
力をこめるイレーネ。どうやら、気に入られたらしい。
腕が胸にはさまれているが、ババアのおっぱいじゃ・・・・・
ちょっと、よかった。
アンジェリカにもすすめられ、今日はここで一泊することになった。




