166 旅・2日目
市民にエリアヒールをした後、マーティアが教会の入口まで戻って来ると、
この教会の責任者であるアイラト司教をはじめ、職員・シスターたちが
膝をつき両手を前に組んで出迎えていた。
「聖女様、多くの市民をお助けくださりありがとうございます。また、
私達の力が足りないため、お力をお借りしたこと、お詫びいたします」
アイラト司教が言う。
「詫びる必要はありません。人は持っている力で精一杯やるしかないのです。
私もまだまだ力不足を感じていますので、これからも努力を怠らないように
しなければなりません」
マーティアはそう言って、出発の準備のため教会の中に入って行く。
(あのエリアヒールを放つ魔力があるのに力不足?!)
実はアイラト司教は、マーティアを侮っていた。
(聖女になって数年の17歳の小娘が『救済の旅』だと?!
身の程知らずめが!)
と思っていたら、今のとんでもないエリアヒールである。
あんなこと先代の聖女の全盛期でも無理であった。
これ以上の力をつけたら、いったいどういうことになるのか・・・。
アイラト司教は、無言でマーティアを見送るのだった。
30分ほど後、聖女一行は教会を出発した。
朝、教会に集まっていた市民は、ほとんどが教会前に留まっていた。
そして、聖女一行を歓声とともに見送った。
その歓声は、ほとんどが「聖女様~!!」で、あったが、「タイガ様~!!」
「神使様~!!」というよくわからないものが含まれていたのを
気づいた者は極少数であった。
トリオール市を出て、街道を進む聖女一行。
その馬車の中でリョウは侮蔑の目に晒されていた。
「・・・、そして、リョウ様は、少女の左右の胸を両手で鷲掴みにして・・・」
「してません!!!」
コリーヌの説明に大声でツッコミを入れるリョウ。
「形や柔らかさを確認するために触っただけです!」
「リョウ。どっちにしろ、変態行為だと思うが・・・」
グレイシアが冷静にツッコむ。
「いや、そうじゃなくて・・・!」
アミーナの治療について話していたら、コリーヌが悪意のある表現で
説明してきたのである。
「どうせ治すのなら、左右バランスのとれた美乳のほうがいいでしょ?!」
どうやらリョウは、昨夜ウィスラー伯爵の義母のマルティナにした
全身エステの勢いが残っていたようだ。
「つまり私のような貧乳はダメだと?!」
コリーヌがわざと悲しそうな演技をしながら言う。
完全に面白がっている。
「いや、それはそれで需要があるかと・・・」
フォローになっているのかわからないことを言うリョウ。
「私のようなのは大きすぎて醜いと?!」
マーティアがのっかってきた。
「いえ、大きいことはいいことです」
半世紀前のチョコレートのCMのようなことを言うリョウ。
「俺の胸は半分以上筋肉だと?!うるさいわ!!」
グレイシアに至ってはノリツッコミまで、かましてきた。
リョウが助けを求めるような目でジュリアを見ると、彼女は向こうを向いて
笑いをこらえていた。
かくして中では収拾がつかないまま、外見は何事もないように
馬車は進んで行くのであった。
50円!




