157 リョウ式全身エステ・結果
「まだ終らんのか?!義母上は大丈夫なのか?!」
ジャスティン・ウィスラー伯爵はイラついていた。
義母たちが治療と言って寝室に入ってから30分以上が経っている。
あの男はいったい何なのだ?
妻は大賢者などと言っていたが、そんな者がいるなんて話は聞いたことがない。
聖女様や妻のレイチェルも一緒なので大丈夫だとは思うが、何となく
あの男は気に入らなかった。
「う~~~・・・」
伯爵のイライラはもう爆発寸前である。
使用人たちは八つ当たりが怖くて遠巻きに見ているしか出来ない。
そして、コリーヌとグレイシアは何も気にせずにのんびり待っていた。
その様子に伯爵の矛先が向く。
「お前達!落ち着いているが本当に大丈夫なんだろうな?!」
「大丈夫ですよ~、それとも聖女様が信じられないとでも、
おっしゃるのですか?!」
コリーヌがのんびりと答える。
「聖女様ではない!あの男のほうだ!!」
「ああ、リョウならもっと大丈夫だぞ。バカがつくぐらいのお人好しだし、
女には年齢関係なく優しいから」
グレイシアの言葉遣いにさらにイラっとした伯爵だが、無知な南の蛮族の
出身のようだし、なにより聖女様の護衛であるので怒りを抑える。
ガチャッ
そのときドアが開き、男女が出てくる。
それを見た伯爵は・・・
「レイチェル!! 何をしてるんだ?!!!」
思わず叫んでしまった。
男は当然リョウである。
その今日会ったばかりの男に自分の妻が嬉しそうに腕をからめて寄り添って
いれば、叫ぶのも当然だろう。
自分の妻であれば・・・
女性は一瞬驚いた表情を見せた後うつむき、そして
「くくく・・・」
小さな声で笑い始め、
「おほほほ・・!! レイチェルですって?!! ほほほ・・・」
こらえきれずに、顔を上げて大声で笑い始めた。
「え?!」
わけがわからず、戸惑う伯爵。
そのとき
「私はこっちよ」
2人の後にドアから出てきた女性が声をかける。
伯爵の妻、レイチェルである。
「な!!」
意味がわからない言葉を発した伯爵が、リョウの隣の女性とレイチェルを
何度も見比べ、そして言う。
「は・・・義母上?!」
「そう、あなたの義母、マルティナよ~!」
なぜか誇らしげに胸をはって名乗るマルティナだった。
その後、レイチェルも全身エステをしたいと伯爵に許可をもらおうとしたが
他の男に身体を触らせることなど、伯爵は頑として許さなかった。
レイチェルはあきらめきれず、あやうく夫婦喧嘩になりそうだったが、
美顔エステでなんとか妥協してもらった。
そして、やっと晩餐会である。
今、リョウの目の前で並んでテーブルについているマルティナ・
レイチェルの母娘は、歳の近い姉妹のように見える。
マルティナはもちろん、レイチェルも気になっていた小ジワがなくなって
ご機嫌である。
それに反して伯爵が不機嫌であった。
待たされたことや、最愛の妻がリョウに身体を触らせることを許可しろと
言ったからであるが、はっきり言って八つ当たりである。
さて、どうしようかと考えるリョウであった。




