146 出発
大司教たちスリーおっさんズは、ドラ焼きを貰ってホクホク顔で
部屋を出て行った。
そして、部屋にはリョウとマーティアだけである。
マーティアがリョウに向き直り言う。
「リョウ様は、もう少し私に怒ってもいいんですよ」
「は?!」
いきなり、何事かと驚くリョウ。
「一応、雇い主とはいえ、便利に使われすぎだとは思われないのですか?」
ああ、そういうことかと納得するリョウ。
「まあ、そのへんは、感じていないことはないですが、私利私欲や
教会だけのためではないですし、私の目的のことも考えていただいて
いるのでしょう?!」
「あら、お気づきでしたか・・・?!」
と、マーティア。
「神界で技芸神のカナーリオ様が、ポロッと漏らしてしまわれ
ましたからねぇ・・・」
両手を左右に広げ肩をすくめ、俗にいうヤレヤレポーズをとりながら
言うリョウ。
「ええ、そのときは、ピンとこなかったのですが後で考えてみると
いろいろと思い当たることがありました。特にリョウ様があまりにも
無欲であることですね。それだけの知識をお持ちなら莫大な財を
築くこともおできでしょうに・・・」
マーティアはあきれたように言う。
「ところが、技芸神様のおっしゃった『役目は文明を進めること』なら
知識を与えることそのものが目的なので、対価はあまり必要では
ないのではないかと」
「はい。対価を多くとってしまうと、それを取り返そうとして知識を
独占しようとしたり、出来た商品を高額で売ろうとしますので、知識や
物が広まらなくなってしまいます。
まあ、初期投資や試行錯誤が必要な物については、その分を取り返す
ぐらいはいいと思いますけど」
自分の言った言葉で、ガリア領のウイスキー工場の建設のことを思い出す
リョウ。
ガラントはちゃんと大型の蒸留器を作れただろうか・・・、などと
考えている。
「まあとりあえず、この旅の間は、マーティア様に『便利に使われて』
おくことにします。もちろん、何でもというわけにはいきませんが」
いつものお兄ちゃん属性が発動しているリョウ。
しかも、マーティアは実の妹の恵と同じ17歳なので効果も5割
増しである(当社比)。
そう言うリョウを見ていて、文明を進めるという役目がなくても、
彼は同じようにしただろうと思うマーティアであった。
ガラガラガラ・・・・
8頭の騎馬の護衛に守られ、大通りを3台の馬車が進んで行く。
先頭は教会と聖女の印をつけた馬車で、聖女やリョウが乗っている。
真ん中の馬車には神官やシスターが、そして最後の馬車には鍛冶や
大工などの職人が乗っていた。
昨夜のグレイシアの発言で同行を希望する者が増えたため、総勢は
30人ほどに増えていた。
一行は城門の貴族専用の出入り口に向かう。
先触れをだしており、順番も最優先されるので、形式上のチェックだけで
すんなりと外に出る。
マーティアが、馬車の窓越しに挨拶すると、門番たちは大喜びであった。
さて、いよいよ、アラバンドに向かって出発である。




