144 出発準備その5
手伝いのシスターたちとドラ焼きを配膳していくリョウ。
「これは、ふんわりと焼いた生地に豆から作った甘い餡子というものを
はさんだドラ焼きというお菓子です。紅茶によく合いますので一緒に
召し上がってください」
そう言った後、紅茶を注いでいく。
懸念した黒い食べ物や豆が甘いことの違和感もないようで、普通に
皆、食べていた。
そして、全員の食事も終り、リョウが自分の食事にしようと食堂を
出ようとしたところ、グレイシアが、話しかけてきた。
「あ~~、うまかった! リョウ、旅の間も料理を作ってくれるんだろ?!」
食べたばかりなのに、もう旅の食事の心配である(笑)。
「はい、時間に余裕があれば作りますよ」
それを聞いた者の目がキラーンと光る。
この後、聖女のところに、旅に同行したいという者が殺到するのであった。
そして、手伝ってくれたシスターたちと一緒に夕食を済ませたリョウは
ジュリアと一緒に呼ばれて、マーティアの部屋に来ていた。
「盗み聞きされる心配はないですか?」
マーティアが聞く。
大丈夫だとうなづくリョウ。
マーティアの横にはコリーヌとグレイシアが控えている。
「今回の旅の一番の目的についてお話します。もちろん、他言無用です」
そう前置きして、マーティアは考えている計画を話し始めた。
翌朝、旅の出発準備であわただしいマーティアのところに男性が
3人やってきた。
大司教と司教2人である。
「聖女様!昨夜の夕食会、なぜ、とてもおいしい料理がでると言って
くださらなかったのですか?!」
3人の代表として大司教が言う。
「あら?今回の旅の準備をねぎらうために食事会をするとお誘いしたのに
断られたのは、そちらでは?!」
「そ、それはそうですが・・・異国の珍しくておいしい料理だとは・・・」
大司教、言葉の歯切れが悪い。
「ちゃんと使いの者に、異国の賢者様が料理してくださるということと、
メニューについても、メインは鶏肉の料理で、野菜のスープと
ジャガイモのサラダ、そして豆のデザートと伝えさせましたよね?!
それを聞いて、『鶏肉にジャガイモに豆ですか・・・』と
おっしゃったとか・・・?!」
「う・・・」
教会で聖女の次に偉い人たちのはずだが、こうなるとただのおっさんである。
「私も初めて食べた料理ですので・・・正直、普通にどこにでもある
食材があんなおいしい料理になるとは、思いませんでした」
本当のことではあるが、以前にリョウの料理を食べているので
期待と予想はしていたマーティアである。
「まあ、余った分は収納バッグに入れてありますので、今から
お出し出来ますが・・・」
ニッコリ笑って言うマーティア。
「え、それでは・・・!!」
おっさんズの表情が一気に明るくなる。
「はい、用意させますので少しお待ちください」
とてもいい笑顔で言うマーティア。
忙しい中、リョウが呼ばれるのだった。




