143 出発準備その4
食堂に集まった教会の職員や神官、シスターたち。
目の前には、今まで見たこともない料理が並んでいる。
また、オリビアに会いに学園に行っていたジュリアも合流して
席についていた。
「急に決まった旅の仕度、ご苦労様です。そのねぎらいの意味も兼ねて、
今日の夕食は、こちらの異国の賢者・リョウ様が作ってくださいました」
マーティアがリョウを紹介する。
「ニホンという国から来たリョウと申します。私の国の家庭料理ですが、
皆さんの口に合うと嬉しいです。どうぞ、召し上がってください」
皆の『早く食べさせろ!』というプレッシャーがすごかったので、
挨拶を短くすませるリョウ。
見たことのない料理だが、いかにもおいしそうな見た目と香りに
我慢も限界にきており、リョウの『召し上がって』という言葉で
一斉に食べ始める職員、神官、シスターたち。
「「「「「「 !!!!!! 」」」」」」
おいしかったようである。
「今回の料理、スープはミネストローネというトマトを主体にした
ものです・・・」
料理の説明をはじめるリョウ。
「サラダはジャガイモをつぶしてマヨネーズという調味料であえた
ポテトサラダ。そのままでもおいしいですが、パンに乗せたり、
はさんだりも試してみてください。メインは鶏肉に小麦粉をまぶして
油で揚げた鶏肉のカラアゲです。部位によっての違いを楽しんで
ください」
「カラアゲは、前に食べたものと味付けが違いますね」
ジュリアがリョウに言う。
「王都でいろいろな調味料が手に入ったので、変えてみました。
前のは塩味でしたが、今回は魚醤を主体にした味付けですね」
「それで、今回のは味が複雑で香りもよくなっているんですね」
「うまっ!ポテトサラダのパンはさみ、うまっ!!」
と、グレイシア。
「ポテトサラダは、サンドイッチの具としても人気ですからね。
今回は、カリカリにしたベーコンをアクセントにしてみました」
それを聞いた何人かが、ポテトサラダをパンにはさんで食べ始める。
「この薄いカラアゲ、パリパリで、おいしいです」
コリーヌが鶏皮のカラアゲを食べている。
「えっ?!そんなの俺の皿にはないぞ!」
グレイシアが言う。
「あ、どうしても部位の偏りがでますので、そのへんはご了承ください。
皮は、モモ肉の部分とかにもついていますので・・・」
リョウが説明するが、
「う~、なんか微妙に違う気が・・・」
グレイシアは不満なようだ。
「はい、どうぞ」
ジュリアが自分の皿にあった鶏皮のカラアゲをグレイシアの皿に移す。
「お、おう・・・ありがとう」
グレイシアがとまどいながら礼を言う。
「いいえ」
微笑みながら言うジュリア。
「食後のお菓子を用意してきますので、引き続き食事をお楽しみください」
そう言って退出するリョウ。
『なんちゃってドラ焼き』のためのミニホットケーキをシスターたちに
作らせたら、大きさや焼き加減などがとんでもなくバラバラになったので、
結局全部リョウが作ることになった。
そのため、食事の時間までにアンコをはさむ作業が間に合わなかった
のである。
「出来ましたか?」
リョウは厨房に入って、シスターたちに聞く。
「はい、もうすぐ終ります」
アンコをはさむ作業をしながらシスターの1人が言う。
アンコは、同じ大きさのスプーンで計ることで、量の誤差を少なくしたため
だいたい同じように出来ていた。
「いいですね。では、出来上がった分から食堂に運びましょう」
リョウはシスターたちと出来たドラ焼きを食堂に運ぶのだった。




