138 フルーツサンド
「これはカテリーナ様、ごきげんよろしゅう」
リョウと一緒に来たのはマーティアであった。
もちろん、おしのびなのでダーク聖女のほうである。
「ごきげんよう、マーティア様。なぜリョウと一緒にここに?」
「私もリョウ様とアラバンドに行くことになりましたので」
にこやかに返事をするマーティア。
「え?!リョウ、この方はどなたですか?」
聞いたのはジュリアであった。
ちなみに、パーティー仲間になるのだからと、お互いに名前を
呼ぶときに敬称はつけないことになった。
「う~~ん、とりあえず場所を変えましょうか」
こんなところで王女や聖女の身バレをするわけにはいかない。
当然の提案であった。
「うん、さすがにリョウの作ったものにはかないませんが、
充分おいしいですね」
演劇場で用意してもらった部屋に移動し、出前してもらった
サンドイッチを食べながらカテリーナが言う。
ジュリアとパトリシアは、カテリーナとマーティアの身分を聞かされて
2人で身を寄せ合って小さくなっている。
「これもリョウ様のお国のものですか?!」
マーティアが聞く。
「はい。まあパンに何かを乗せたり、はさんだりするのはどこにでも
あるでしょうが、料理として通用するまでに洗練させたということですね」
「たしかに、はさむ物の組み合わせや味付けのソースが工夫されて
一品の料理のようになっていますね・・・」
マーティアは、サンドイッチの断面を見て、パンを少しめくりながら言う。
「はさむ物は何がいいのでしょうか?」
「こういう中に入れる物を『具』と言います。基本的に合うソースさえ
あれば具は何でもいいですね。例えば・・・」
リョウは、調理用具を取り出しパンを薄切りにする。
薄切りにしたパンに生クリームを塗り、イチゴやオレンジなどを
切ったものをはさみ、4等分して女性たちに渡す。
「果物を使ったサンドイッチなのでフルーツサンドと呼ばれます。
食事というよりもお菓子やデザートの仲間ですね」
「これは!?」
「何?!これ」
「おいしい!」
「パンは食事という概念まで崩すとは・・・」
全員、気に入ったようだ。
「リョウ!これをもう2つ・・・いや5つ作って頂戴!」
カテリーナが注文する。
「え~~~~?!!!」
「頼みます!このようなものを私だけが食べてると母上や姉上たちに
知れたら、まずいのです」
護衛から報告がいったときに、絶対文句を言われるに違いない。
まあ、クレメンツ伯爵のことで借りもあるしと作り始めるリョウだが
・・・残りの6つの目が無言の圧力をかけてきた。
「はいはい、わかりましたよ・・・」
結局、10個作ってしまった。
2つ多いが、グレイシアとコリーヌの分である。
それにしても、ボムリザードの狩りの話のために来たはずなのに、
なんで大量にサンドイッチを作ってるんだと思うリョウであった。




