129 デートその12
「あら、気がついた?!」
パトリシアが言う。
「自分の名前が歌詞にでたぐらいで気絶するなんて、とんだオボコ娘ね」
あきれたように言うパトリシア。
「はぁ・・・」
まだちょっとぼんやりしているジュリア。
(冬には白くなるイタチみたいな動物がどうしたんだろ?!)
などと考えているが、それはオコジョである。
そして、周りを見回して
「リョウ様は?!」
と聞くジュリア。
「客席から、あなたを抱えてきてそこに寝かせた後、カフェの店長に
呼ばれて行ったわよ。あなたのことは、私が見るということで」
「カフェ?!」
そして、カフェに呼ばれたリョウである。
カフェの店長の用事は、サンドイッチの作り方を教えてくれということであった。
リョウがウエイトレスにやったサンドイッチを『同じ物を作ってやるから』と
言って分けてもらったが、うまくいかなかったそうである。
それで、ウエイトレスに責められて、リョウに泣き付いてきたのである。
「はい!がんばって混ぜる!」
それで今は、マヨネーズの作り方を教えている。
(それにしても、歌詞に名前を入れただけであんなことになるなんて・・・)
ジュリアのことで、ちょっと後悔していた。
(まあ、調子に乗ってビ○ト○ズの曲にしなくてよかったと思おう。
あれだとモロだから、もっと大変だったかも)
白いヤツに収録されている曲である。
「一番大事なことは、パンに水分を含ませないようにすることです。
使う野菜は洗ったあと水を完全にきってから使います。風魔法で
乾かせばもっといいですね。パンに薄くバターを塗るのもいいです。
そのときアクセントにマスタードなんかを・・・」
そして、サンドイッチに使う材料や調味料、作るときのコツを説明する。
「うまっ!わしがさっき作った物とは別物だ!」
と店長。
「ハムチーズもおいしかったけど、このゆで卵のフィリングというのは
もっと好きです!」
ウエイトレスの機嫌もなおったようである。
シャカシャカ・・・
「リョウ様、何を作っていらっしゃるので?」
店長が聞く。
「卵の白身が余ったので、これでお菓子を作ろうかと・・・」
マヨネーズで黄身だけを使ったので白身が余っていた。それをリョウは
泡だて器でかき混ぜメレンゲを作っていた。
そして、別に作っておいた生地に今作ったメレンゲとマヨネーズを混ぜ
フライパンに流して焼く。
そう、ホットケーキを作っているのである。
ガリアでは、ベーキングパウダーがなくてあきらめたが、メレンゲと
マヨネーズを使ってみたら・・・と思いついたのである。
膨らみ方が微妙だが、バターとハチミツをかけて試食してみる。
うん、充分おいしい。
ジュリアとパトリシアと自分の分を焼く。
「ん?!」
試食した残りを店長とウエイトレスがじっと見ていた。
「残り物ですけど、よかったらどうぞ」
大喜びで食べる2人。
「じゃ、パトリシアさんの控え室に紅茶を3杯出前頼みますね」
リョウは、そう言って焼いたホットケーキを持って控え室に戻るのであった。




