13 猫
「え?!なぜ、そのようにお考えを?」
とりあえず、無難な答えを返すリョウだが、あまり
ごまかせていないようだ。
「いえ、責めているのではありません。若い男性なら、
年頃の娘に興味を持つのは当たり前ですから。
ただ、普通は、こちらのクラリスを気にかけると思うのですが、
レイナのほうにばかり注意を向けてるように見えたもので
そういう趣味の方かな・・・と」
メイドの名前はクラリスというらしい。
普通に美人の部類に入るであろう娘だが、初めて会った
獣人という衝撃に、リョウは、ほとんど気にしていなかった。
ファースト&ビーストインパクトである。
「実は、失礼かと思いだまっていたのですが・・・」
リョウは素直に話すことにした。
「私の国には獣人がいないのです。初めて会ってしかも
大好きな猫系統の獣人なので、つい見てしまっていたようです」
「猫とは何ですの?」
アンジェリカが聞き返す。
他の2人も知らないようだ。
「愛玩用の家で飼う動物ですが、この大陸にはいないのですか?!
レイナさんのような耳をして、大きさがこのぐらいで・・・」
と猫についての説明をはじめるリョウ。
「まあ、そのような座り方を」
「ひざの上に乗るのですか」
などと、なかなか反応がいい。
なので、調子にのって猫の素晴らしさを熱弁するリョウ。
聞くところによると、ここでは家畜以外の動物は、よほどの物好きや
金持ちの道楽のようなものでないと飼わないようだ。
「うちでも飼っていたんですが、去年、亡くなってしまいまして」
リョウの家でもクッキーという黒猫を飼っていたが、老衰で亡くなっていた。
「まあ、それは悲しいですわね」
アンジェリカが同情する。
「レイナ、丸くなってリョウ様の膝の上に乗ってあげたらどう?!」
そして、またぶっこんできた。
「お、奥様!!」
真っ赤になって、あわてるレイナ。
リョウもあわてて、
「アンジェリカ様、ご冗談がすぎます」
と否定する。
それを見て、オホホホと笑うアンジェリカ。
(あ、この人、面白がってるだけだ)
と判断しながらも、ちょっとその提案に乗ってみたかったリョウであった。




