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127 デートその10

舞台の幕が左右に分かれていく。


楽団が現れ、中央に立つ女性が一歩前に出る。

歌姫・パトリシアである。

割れんばかりの拍手とともに楽団が前奏を演奏し始める。


前奏が終るタイミングで拍手が鳴り止む。

歌の邪魔をしないように観客のマナーとなっているようだ。


そして、パトリシアが歌い始める。


リョウは舞台の袖で出番を待ちながら聴いていた。

パトリシアは7曲歌う予定で、リョウの出番は最後の2曲である。


パトリシアは、さすがに歌姫と言われるだけあって透き通った感じの

よく通る声であった。

ただ、リョウは微妙に違和感を感じていた。


「やっぱりパトリシアさんの歌はステキですね~」

女性職員がリョウに話しかけてきた。


「あ、私、シルヴィと申します。今回はありがとうございました」

カフェで事情を説明したり、支配人に肘鉄をくらわしたりした人だ。


「いえいえ、あなたもいろいろ大変そうですね」

冗談っぽく返すリョウ。


(シルヴィか・・・両手にハサミを持って『フォッフォッフォ』とか

やってくれないかな?!)

などと相変わらずわけのわからないことを考えるリョウ。


「そうなんですよ~、うちの支配人、いい人なんですけど、言葉足らずと

いうか、多すぎというか・・・」

支配人のフォローで苦労してるようだが、わりと楽しそうである。


「パトリシアさんの歌、すごくステキなのは確かなんですが、ちょっと

変じゃありませんか?響きがよすぎるというか、通りがよすぎるというか・・・」

リョウはさっき思った疑問をシルヴィに聞く。


「ああ、リョウさんはご存知なかったんですね。彼女、風属性の魔法を

使って声がよく通るようにしてるんです」


「は?」

意味がよくわからないリョウ。


「彼女、山岳地帯の出身でして、その地方では遠くの者に意思を伝える

必要があるときは、笛や太鼓などを使った合図を使っていたんですが、

あるとき彼女が自分が持っている風属性の魔法を利用することを

思いついたんです」


「ああ!なるほど」


山岳地帯では、高低差のために移動がしにくく連絡がとりにくい。

そのため、地球でもヨーロッパのアルプス山麓のあたりでは

連絡のためにアルプスホルンを使ったり、ヨーデルという独特な発声の

歌唱法が生まれたことを思い出すリョウ。


「それ以降、風魔法の適正がある者はその地方では重宝されるように

なりましたが、こうやって歌に使えるほど微妙な調整は彼女以外に

出来る者はいません。聞いてのとおり、歌声もすばらしいですし」

なぜか誇らしげに語るシルヴィ。


「ただ、出身地の領を中心に活動しているので、もっと王都で

やってほしいと頼んでいるんですが・・・」


やはり地元愛とかあるのかな・・・?!などとリョウが思っているうちに

出番がせまってきていた。


「リョウさん、今始まった曲が終ったら出番です」


「わかりました」

青山せいざんを用意するリョウ。


「さて、いっちょ派手にいくか!」


気合を入れるリョウであった。

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