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122 デートその5

「お~、なかなか立派な建物ですね」

リョウが感心したように言う。


2人が来たのは、王立中央演劇場、要するに歌や芝居をやるところである。

闇夜の黒猫亭のエマやゾーエに『デートにいい場所は?』と聞いたところ

ここを薦められたのである。


技芸神の加護ももらっていることだし、この国の演劇のレベルを見て

おきたかったというのもあった。


今日の演目は、人気の歌姫・パトリシアのリサイタルと救国の英雄ギャンル・

ポゴーを題材とした演劇である。


「私も一度は来たいと思っていました」

ジュリアも興味があったようだ。


「まだ開演まで時間がありますので、カフェでお昼にしましょう」


劇場の通路をのんびり歩く2人。

手は俗に言う『恋人つなぎ』である。


ニホンでは、デートのときはこうするんだとでまかせを言ったところ、

ジュリアは恥ずかしがりながらも、受け入れた。

ラッキーである。


通路を、あわてた様子で走り回る者が何人かいた。


「見つかったか?」

「中庭にほうにはいませんでした」

「まったく、どこに行ったんだ・・・」


彼らの話し声からすると、誰かを探しているようだ。

自分達には関係ないことなので、放置する。


そしてカフェに着いた。


「すみません、ここは持ち込みはいいんですか?」

ウエイトレスに聞くリョウ。


「何か注文してくださればいいですよ」


「じゃ、飲み物を・・・ジュリアさん、紅茶でいいですか?」


「はい」


「じゃ、紅茶を2つお願いします」

テーブルにつくリョウとジュリア。


そしてリョウは、今朝作ったサンドイッチを取り出す。


「どうぞ。ニホンではサンドイッチと呼ばれるものですが、こっちに

似たようなものはありますか?!」


「いえ、こういう形のものは見たことがありません。切り口が色とりどりで

きれいです。おいしそうですね」

サンドイッチを手に取って見ているジュリア。


「これは、作法なんか気にせずに大きく口を開けてかぶりつくほうが

おいしいので、ガブッとやっちゃってください」


「は、はい・・・では」

そう言われてもジュリアは大口を開けるのを、ためらわずにはいられない。

結果、微妙な大きさに口を開けてサンドイッチを食べる。


その様子がかわいくて、思わず微笑むリョウ。


「おいしい!!」

ジュリアが最初の一口を飲み込んで言う。


「リョウ様、すごいです。特に変わった材料じゃないのに、組み合わせで

こんなにおいしくなるなんて!」


「まあ、私が発明したわけじゃないんですが・・・」

自分もサンドイッチを食べながら言うリョウ。


そこにウエイトレスが紅茶を持ってきた。

「お客様、その食べ物は?」


「薄く切ったパンにハムや野菜をはさんだ異国料理でサンドイッチといいます」


「あ、あの・・・、少しいただけないでしょうか?」

恥ずかしそうに言うウエイトレス。


「はい。えっと・・・ハムチーズがいいかな?!どうぞ」

相変わらず、かわいい女の子には甘いリョウである。


サンドイッチを受け取り、嬉しそうに小走りで厨房に戻るウエイトレス。


そして、少しして、

「わ!何これ、おいしい!!」

と言う声が厨房から聞こえた。


その後、

「俺にもよこせ」とか「いやです」とか言い合う声が聞こえたが

気にしないことにするリョウである。


サンドイッチを食べ終わり、リョウたちが移動しようとしたとき、

カフェに立派な服を着た小太りの中年男が入ってきた。

ゼェゼェと息を切らしてふらつきながらテーブルにつく。


「支配人、まだ見つかりませんか?!」

ウエイトレスが声をかける。


「ああ、ま、まったくどこに行ったのやら・・・ハァハァ・・・

す、すまん、水をくれ」

さっき走り回って人を捜していた者たちの仲間のようだ。

ウエイトレスに支配人と呼ばれたということは、この劇場の支配人だろう。


カフェを出ようとして、彼の近くをリョウたちが通ったとき、


「あ~~~~~~!!!!!」


支配人が大声で叫んだ。

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