120 デートその3
何が起こっているのか、わからない貴族と護衛たち。
もちろんリョウが、さっき彼らに触ったときに治しておいたのだ。
殴って皮がむけていたジュリアの拳も治してある。
「それとも、尻を触った女性に護衛ごと殴り倒されたという話を
広めたいんですか?そちらの、珍しい剣を構えた護衛さんたちの話も
皆が面白がるでしょうね~?!」
あわてて、柄だけになった剣を鞘に納める護衛たち。
「クレメンツ様」
グレアムが貴族に近づき小声で言う。
「悪いことは申しませんので、ここで納めましょう。あの方がとんでもない
お方だということは、おわかりでしょう?!」
「うっ・・・」
確かによくわからないが、とんでもないことが起きていることだけはわかる。
「い、いいだろう。今日のところはこれで納めてやろう。
お、お前、名を名乗れ!」
クレメンツと呼ばれた貴族は、貴族としての見得だけで、なんとか
虚勢を保っている。
「Bクラス冒険者のリョウと申します。御用の節はギルドに指名依頼を
お願い致します」
わざと芝居がかったおおげさな身振りで名乗りの礼をするリョウ。
「わしは、ランディー・クレメンツ伯爵だ。覚えておくがいい!」
「はい、もちろん覚えておきます。次に会ったときが楽しみですね」
にこやかに殺気をぶつけるリョウ。
「うっ!」
弱めの殺気だったが、もろにくらって、うめくクレメンツ伯爵。
よろめいた彼を、あわてて護衛が支える。
そして、そのまま護衛に支えられて去って行った。
「今、あんた、剣を切らなかったか?!というか、切ったよな!」
ジェフリーがリョウに言う。
「さあ?!気のせいでしょ」
そう言ってジュリアと一緒に立ち去ろうとするリョウ。
「リョウ様、今、出られてはクレメンツ様と鉢合わせするかもしれません。
応接室にお戻りください」
グレアムがリョウを引き止める。
「選んだブローチとネックレスも応接室にお持ちしますので」
初老の店員もそう言って引き止める。
「・・・、わかりました。あ、小銀貨5枚ぐらいの髪留めも3つ
適当に選んでもらえませんか」
ジュリアのコーディネイトをしてくれたメイドたちへのお土産である。
「かしこまりました」
そして、応接室に移動した。
「う~~ん、両方買います」
選んでもらったブローチとネックレス、どちらか決めきれなくて
そう言ってしまうリョウ。
「リョ、リョウ様!そういうわけには・・・」
あわててジュリアが止めるが、
「いいじゃないですか、両方つけるとバランスもいいし、なにより
ジュリアさん、ステキですよ」
朴念仁のリョウだが、さっきの伯爵とのやりとりで少しハイになって
しまっていて、普段では言わないようなことをサラッと言った。
「あら・・・」
テレるジュリア。
グレアムと初老の店員は2人をほほえましく見ていたが、ジェフリーは
ボムリザードの依頼のほうが気になってイライラしていた。
「それと、髪留めですが、こちらでいかがでしょうか?」
「あ、いいですね。このタイプを色違いで3つお願いします」
「かしこまりました」
メイドたちへのお土産も決まる。
「御代は金貨3枚と銀貨5枚でお願いいたします」
「え?!安くないですか!」
リョウの予想では金貨4~5枚であった。
「いえいえ、今後ともよろしくお願いいたします」
初老の店員は、一昨日来た残りの2人もきっと連れて来るだろうと思っていた。
「ありがとうございます」
代金を払うリョウ。そして、
「では、失礼します」
席を立つ。
「帰るな~!!!」
思いっきりツッコむジェフリーであった。




