12 馬車にて
「それで、そのニホンという国は遠く離れた島国だと・・・」
「はい。ただ、難破したので、方向や距離はわかりません」
リョウは馬車の中でガリア辺境伯の姉、アンジェリカ・G・
メイフィールドと会話していた。
彼女はガリア辺境伯領の隣のメイフィールド伯爵領に嫁いでおり、
実家の母の病気見舞いに里帰りするところだということだ。
今回、助けてもらった礼をしたいということと、リョウが高レベルの
治癒魔法が使えるのを知って母の治療もしてほしいということで、
馬車に乗せてもらって同行することになった。
馬車には、アンジェリカの隣に世話役のメイド、その向かい側にリョウ、
そして、リョウの隣に獣人のレイナが座っている。
普通なら護衛のリーダーとして、デルムッドが乗るはずだが
リョウに対するサービスだろう。
どうやら、リョウの能力を見て、取り込もうとしているようだ。
リョウのほうも、目的のためには有力者とお近づきになりたいし、
むさいおっさんよりもケモッ娘のほうがいいに決まってるので
願ったり叶ったりである。
実際、リョウとアンジェリカとの会話で、お互いの国について
話しているとき、
「まあ、識字率がほぼ100%!」
「政治の代表を投票で選ぶのですか」
などと言うレイナの反応と仕草がとてもかわいらしく、
リョウは、仲良くなりたいという気持ちが強くなった。
そして、いつかモフらせてもらおうと。
アンジェリカは見た目アラフォーの落ち着いたぽっちゃり体形の
母性が強い中にも気品を感じる女性だった。
会話によって、その知性の高さもうかがわれた。
2人の会話において、リョウはニホンの調査団の一員だったが
船が難破し、一人でこの大陸にたどりついたと説明した。
幸い、収納魔法のバッグがあったので、なんとか今まで
生き延びられたという設定だ。
アンジェリカからは、この国の基本的な制度や人種、
主なモンスターについての情報などを説明してもらった。
それによると、ゴブリンはともかくオーガがあんなところに
いるはずがないということだ。生息域に何か異変が起きて
いるかもしれないということで、弟のガリア辺境伯に
報告して、調査をしてもらうことになるだろうということだ。
「ところで・・・」
「リョウ様は、獣人に特別な興味がおありでしょうか?」
アンジェリカがいきなりぶっこんできた。




