117 ノーレッジ子爵王都屋敷
「また来てくれよ」
「いろいろありがとうね」
「待ってますわ」
「お兄ちゃん、また来てね」
「はい、お世話になりました」
リョウは、闇夜の黒猫亭をチェックアウトした。
カテリーナが来たということは、他にも面倒な者が来る可能性が高い。
王家の依頼なんて受けたくないので逃げることにしたのだ。
他の宿も見てみたいし、今日はドミニク商会に行く予定があるので、
そこで次の宿を紹介してもらおうと思っていた。
まずは、ノーレッジ子爵の王都屋敷に行く。
門番に護衛隊長とジュリアへの取次ぎを頼む。
前もって連絡しておいてくれたらしく、すんなりと通される。
「執事のルドルフ・グレイでございます。リョウ様、オリビアお嬢様を
お助けくださり、ありがとうございます」
初老の男が礼を言ってきた。
感謝の気持ちなのであろうか、リョウは応接室に案内される。
普通なら護衛の待機室であろう。
それに使用人の客に執事はでてこないはずだ。
出された紅茶を飲んでいると、護衛隊長が部屋に入ってきた。
「よう、リョウの旦那、ジュリアだけじゃなく俺にまで用事なのかい?!」
そういえば、なぜか護衛たちはリョウのことを『旦那』と呼ぶ。
「いい知らせなので、そちらからオリビア様に伝えていただきたいと
思いまして」
本当は学園に行くと何か頼まれそうなので、行きたくないだけである。
「いい知らせ?!」
そして、リョウはエレールからの報告を話す。
「おう、ミックを捕縛したのか!そりゃいい知らせだ」
エレールの報告によると、ミックは街の警備隊の1人を買収して
魔物使いたちを脱獄させたそうだ。
そして、街の外に出たところで始末しようとしたところを
メイフィールド領軍に待ち伏せされ、取り押さえられたとのことだ。
軍の諜報部隊であるエレールたちにかかれば、素人同然のミックたちの
情報など筒抜けであったろう。
「さっそく、お嬢に使いを出さないとな・・・」
そう言って、護衛隊長が椅子から立ち上がったとき、ジュリアが部屋に
入ってきた。
と言うよりも、後ろから押し出されてきた。
「リョ、リョウ様、お待たせしました」
赤い顔で言うジュリア。
「おっ!!」
思わず声を上げるリョウ。
ジュリアは化粧して着飾っていた。
空色のワンピースに白い編み上げのサンダル。足の爪には青いペディキュア。
濃紺のベルトをキュッと締め、白いつば広の帽子を手に持っていた。
その手の爪にもペディキュアより薄い青のマニキュアが塗ってある。
彼女の後方には3人のメイド。たぶん、ジュリアはこのメイドたちに
押し出されたのだろう。
「ほう!ジュリア、いいじゃないか」
護衛隊長が褒める。
「じゃ、デート、楽しんでこいよ!」
そう言って部屋から出て行った。
護衛隊長に先にジュリアを褒められ、出遅れた感にとらわれて何も言えないリョウ。
目を伏せ、リョウの反応を待っているジュリア。
2人の成り行きを楽しみに見守るメイドたち。
しばしの3すくみ状態の後、リョウが動く。
「ジュリアさん、い、行きましょうか」
「え」
そう言ってジュリアの手をとり部屋から出て行った。
残されたメイドたち、呆然・・・淑女でもないのにレディー呆然である。
そして、
「何?!あれ!!!」
「少しは褒めろよ!!」
「とんだ野暮天だわ!!」
自分達で気合を入れたコーディネイトに対する反応のなさに怒り出す。
そこに、
「あなたたち、何をやっているのかしら?!」
ゆっくりと、しかし怒気をはらんだ声がした。
「「「メ、メイド長~!!」」」
ジュリアのためにがんばった3人のメイドだが、残念ながら
むくわれなかったようである。
中学生のときの話です
友達「ボーデンって辞書でひいたけど載ってなかった」
mak「そうなのか」
友達「ホーデンならあったけど」
mak「どういう意味だ?」
友達「金○」
mak「淑女の○玉・・・バカヤロウ!!」




