116 朝食
翌朝、リョウはエレールに起こされた。
「リョウ、朝ごはん!」
リョウの魔力に包まれて癒されたので、元気いっぱいである。
「はいはい、着替えたら一緒に食堂に行きましょう」
リョウもエレールを抱きしめて寝て癒されたのでWin-Winである。
「違う、リョウが作る」
「え~~~~?!」
とか言いながら、作ってしまうのがリョウである。
調理場に来てゾーエとエマに使う許可をもらうリョウ。
腰に左手をあて、右の手のひらで顔を覆い、身体を傾けた不自然なポーズをとる。
そう俗に言うジ○○ョ立ちである。
そして
(くくく・・・、いよいよ封印を解く時がきたか)
と心の中で言ってみる。
もちろん、封印なんかないし、声に出す勇気もない。ちょっと厨二病が
疼いただけである。
まず、ボウルに卵黄、酢、塩、コショウ、マスタードを入れ、泡立て機で混ぜる。
充分混ざったら、オリーブオイルを少しずつ加えながらさらに混ぜる。
固くなってきたら風味付けと酢の代わりのレモン汁を入れ、またオリーブオイルを
入れながら混ぜる。
そう、異世界物の定番、マヨネーズである。
そして出来たマヨネーズと、茹でタマゴ、ハム、チーズ、生野菜を使って、
薄めに切った食パンにはさみ、いろいろなサンドイッチを作っていく。
出来たサンドイッチを1人前ずつ紙で包み、収納バッグに入れる。
次に丸いパンを上下に切り、オーブンで軽く焼く。
そして、焼いたパンの下側にレタスや輪切りのトマトなどをのせる。
そして学園で作っておいたハンバーグをだす。
そのままでは大きすぎるので半分に切ってのせマヨネーズをかけ
パンの上側をのせ、ハンバーガーの出来上がりである。
もともと、エレールが来たら、ふるまおうと思っていたのだが、
昨夜は食事会の料理をだしたので保留になっていたのである。
それで、朝食用にハンバーガーに作り変えてみたのだ。
同じく学園で作ったクリームシチューと一緒に、食堂で待つエレールの
ところに持っていく。
「お待たせ~、ハンバーグという肉料理をはさんだハンバーガーというものと
クリームシチューだよ。どうぞ、召し上がれ」
「ん」
相変わらず無表情だが、リョウには喜んで食べているのがわかる。
2つのグラスにオレンジジュースを注いで、リョウも自分の分を食べ始める。
すると、服のすそがつんつんと引かれる。
うん、わかってた。
服のすそを掴んでいたミーナを抱え上げ、膝に座らせる。
そして、ハンバーガーをナイフで半分に切る。
「はい、どうぞ」
「ありがとうです~」
食べ始めるミーナ。
リョウも自分がかじった方のハンバーガーを食べる。
おいしいものに目がないミーナがおねだりして食べている物。
食堂内の客たちの注目をひかないはずはなかった。
ドウェインやゾーエにそれをくれと注文するが、当然、無理である。
客の1人が、話しかけてくるが、
「食事の邪魔をしないでください!」
面倒なので口調だけは柔らかくした殺気を含んだ言葉で追い返す。
エレールが食べ終わったので、リョウはさっき作ったサンドイッチを
2人前とカラアゲ、ポップコーンをだす。
「お弁当にどうぞ。今回はご苦労様でした」
「ん」
それらをエレールは自分の収納バッグに入れる。
そして、リョウの側に行き、ミーナを抱えてリョウの膝から下ろし、
代わりに自分が座る。そしてリョウに抱きついて耳元で何かささやく。
「えっ!」
リョウは思わず声をだす。
チュッと軽くリョウの頬にキスをするエレール。
そして、リョウの膝から下りたエレールはそのまま出口まで小走りで行き、
手を振った後、走り去って行った。




