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109 王女様

リョウはホクホク顔で宿に帰ってきた。

肉屋の後にまわった店の1つで思わぬ食材が手に入ったからである。


つい、スキップしそうなのをこらえながら宿に入る。

すると宿の主人に個室に案内された。

なぜかドアの横には護衛みたいなのがいる。


何があったのだろうかと思いながら近づくと、敬礼をされ中に

入るようにうながされる。


中には・・・


カテリーナ王女様がいた。


たしかに美少女であるが、癒され要素はシ○ーヌが合体した者のように皆無である。

しかも、大事な癒し要員であるミーナを膝に乗せて椅子に座っている。


「あ!お兄ちゃんです!!」

ミーナが膝からぴょんと下りる。


「あ!」

カテリーナが引きとめようとしたが間に合わず、ミーナはリョウに飛びつき

抱っこされる。


(ふっふっふ、すでにカラアゲとポテトで餌付け済みなのだよ)

ミーナをすりすりしながら、心の中で勝ち誇るリョウ。


そしてミーナを抱っこしたまま、挨拶する。

「これはカテリーナ様、何の御用でしょうか?」


「リョウが料理を作ると聞いて来ました。私にもその料理をだしなさい」

堂々と要求するカテリーナ。

たぶん、肉屋で会った料理人から連絡がいったのであろう。


「お断りするわけには・・・」

リョウがそう言うと、


「何?!貴様!!カテリーナ様のご要望を断るというのか!」

そばに居た護衛の女騎士が興奮して言う。


「ひっ!」

その剣幕にミーナが身をすくめる。


「やめよ!」

カテリーナが女騎士を止める。


「リョウ、何か問題があるのですか?」


「今日の料理は大皿に盛ったものをそれぞれが好きな量だけ取り分けて

食べていただく形式にする予定なので、カテリーナ様にはふさわしくないと

思いまして」

ミーナの頭を撫でながらリョウが言う。


ミーナは食べる量が少ないだろうし、グレイシアは普通の人の2~3倍は

食べそうなので、1人前ずつに分けるより、まとめて大皿に盛って

提供しようと思っていたのだ。


「その子と一緒に食べるのですか?」


「この子もですが、他に3人招待しております」


「その3人の身元は、はっきりしているのですね?!」


「問題ありません。少々お耳を拝借してもよろしいでしょうか?」

リョウはそう言ってカテリーナに近づく。


「構いません」

カテリーナはそう言って、左耳に手のひらをあてる。


リョウはその手のひらに自分の手を近づけ小声で言う。


「聖女様です」


「えっ?!」

驚くカテリーナ。


「本当に?」

リョウの顔を見ながら聞くカテリーナ。


黙ってうなずくリョウ。


カテリーナは少し考えてから。

「いいでしょう、一度ゆっくりお話したいと思っていました」


「では、ご一緒でよろしいということで。さっそく調理に取り掛かりますので、

失礼します」


そう言って退室しようとすると、ミーナが作ってるところを見たいと言う。

おとなしく離れて見ていることを言い聞かせて、リョウは調理場に

入るのだった。

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