11 ケモ娘
「あの、大丈夫ですか?!」
嘔吐しているリョウに、女性が話しかける。
「だいじょ、ゲホッ、ゲホッ・・・」
リョウは、まともに返事が出来ない。
プチバーサークで押さえられていた分、反動がきたようだ。
女性はやさしくリョウの背中をさすってくれた。
「本当に助かりました。こんなところにオーガが
でるはずはなかったんですが・・・」
「いえ、ただ、ゲホ、とおり、ゲホッ・・・」
「無理に話さなくていいですよ、落ち着いてからで結構です」
数分後、落ち着いたリョウは、吐いた物に土をかぶせ、
自分にクリーンとヒールをかけて、身体についた汚れをとり、
体調を整える。
「まあ!ヒールが使えるのですか!」
「ええ、必要な方がいれ・・・ば、治療、しま、す、が・・・」
女性に振り向きながら、リョウが答えるが、驚きによって
後半がおかしくなる。
女性は猫のような耳をした、いわゆる獣人であった。
(ケモッ娘、キタ~~~!!)と心の中で快哉を叫ぶリョウ。
魔法があって、モンスターがいるのだからと、ひそかに期待していたのだ。
これなら、エルフやドワーフとかにも期待ができる。
「ぜひお願いします。負傷者はあちらにいますので」
リョウを案内するケモ娘。
(落ち着け!俺、変な態度見せたら、好感度が下がるぞ!)
美少女ゲーム脳が発動しているリョウ。
「私は、リョウ・F・カーラと言います。リョウと呼んでください」
歩きながら、まず、無難な自己紹介から始めた。
1人称が社会人仕様の「私」になっている。
「え!家名が?!貴族の方なのですね。失礼いたしました」
少しあわてるケモ娘。
「私は、レイナと申します」
「あ、いえ、私の国では貴族制はだいぶ昔に廃止になって国民全てが
平民なのです。家名は戸籍整理のために国民全てが持っています」
こういう部分はある程度ライゼンたちと設定を決めていた。
「なので気にしないでください」
「国民全てが平民・・・」
レイナはだいぶ驚いているようだ。
負傷者が集められた場所に近づくと、うめき声が聞こえる。
見たところ、重傷が2人、軽傷が2人、死者はいないようだ。
「隊長、こちらのリョウ様が治癒魔法を使えるとのことで、
治療をお願いいたしました」
レイナが紹介してくれる。
「リョウというのか、本当に助かった、ありがとう。
俺はこの一行の護衛隊の隊長のデルムッドだ。
すまんが、こいつらを見てやってくれ」
「リョウです。よろしくお願いします」
誤解をまねかないように、今回はとりあえず名前だけを言った。
重傷の1人は足の骨折なので(たぶんジャック)、命には
かかわらないと判断して、裂傷のほうから治療を始める。
マジックバッグから飲料水の入ったびんを出し、傷口を洗う。
さらにクリーンもかけたので、感染症の危険はほぼないはずだ。
そしてヒール。
傷口の肉がじわじわと盛り上がって、傷口がふさがっていく。
「「「ええ~~~?!」」」
見ていた者たちから感嘆の声があがる。
「なんだ、そのヒールは?!教会の司教、いや大司教なみじゃないか!」
デルムッドが驚きを口にする。
「ええ、聖魔法のレベルがわりと高いようなんです」
まさか、聖女なみですよ、とは言えないリョウ。
「あの剣の腕前に加えて、このヒールとは、名のある冒険者なのか?!
ハンターランクは何だ?」
興奮して問いかけるデルムッド。
「あ、私、この大陸の者ではありませんので」
「え?!」
「詳しくは、治療のあとでお話します」
そして、リョウは骨折した者と軽傷の者、さらに馬の治療も
するのだった。
日本では貴族制度ではなくて華族制度ですけど、まぎらわしいので。




