107 米
「今日はここまでにしましょうか」
そうリョウが言うと、
「ありがとうございました」
マーティアは、深々と礼をする。
机の上の紙には、細胞分裂についての図が説明付きで書いてあった。
マーティアは、それまでの説明で書かれた人体の内部構造や内臓の働きなどの
図とともに、貴重品を扱うように丁寧にバインダーのようなもので綴じる。
いや、実際に貴重品なのだ。
それも、この世界に大きな変革をもたらすほどの影響力があるものだ。
いずれ文明が進めば一般にも公開することになるだろうが、
それがいつになるか・・・少なくとも自分の代ではないだろう。
とりあえず、聖女にだけ伝授し伝えていき、公開については
後代の聖女の判断にまかせるしかない。
コンコン・・・
そのとき部屋のドアがノックされた。
「マーティア様~、もうとっくにお昼過ぎましたよ~」
ドアを開け、コリーヌが言う。
後ろにはグレイシアもいる。
「ちょうど終ったところです。リョウ様、お昼御飯はどうされますか?」
「そうですね・・・今夜の料理の材料を買いに市場に行くので
そこで適当に屋台ででもすませます」
「今夜の料理の材料??」
マーティアが聞く。
「ええ、私の国の料理を作ってやると宿屋の娘さんに約束したもので」
「リョウ様の国の料理!!」
コリーヌの目がキラ~ンと光る。
「私も食べたいです!」
「俺も食べたいぞ!」
グレイシアも同意する。
「多目に作るので、夕方、学園通りの『闇夜の黒猫亭』に来れば
ご馳走しますよ」
「マーティア様、行きましょう!!」
コリーヌがマーティアにねだる。
「そうですね。私も興味がありますし、ご馳走になりましょうか」
マーティアも食べたいようだ。
「では、夕方に。あ!明日は、ドミニク商会に行く用事がありますので
次は明後日の朝ということでいいでしょうか?」
ジュリアとのデートもあるのだが、さすがにそれは言う必要はないだろう。
「はい、それで結構です。コリーヌ、裏門の門番に伝えておいてください。
それから報酬を・・・」
マーティアがコリーヌから皮袋を受け取り、リョウに渡す。
「とりあえず、前渡しとして金貨10枚です。依頼完了で金貨20枚を
支払うということでよろしいでしょうか?」
全部で日本円で300万円ぐらいの価値である。
「はい、それで結構です。では、失礼します」
リョウはコリーヌの案内で馬車で裏門まで送ってもらった。
そして、市場である。
さすが王都の市場だけあって、八百屋を見ただけでも品揃えが違う。
品質がよさそうな物を適当に買っていく。収納バッグ、便利すぎ!
もちろん、定番のジャガイモやタマネギも忘れない。
米について聞いてみると、穀物を扱っている店を教えてくれたので
行ってみると米があった!
しかし、微妙に違和感が・・・インディカ米であった_l ̄l○
しかし、米は米!!ジャポニカ米のように炊くのはイマイチだろうが
チャーハンやピラフに合うはずだ。そしてカレーにも。
カレーを見つけるのと自分で開発するのは、どちらが先になるか・・・。
値段も1kg200シルほどであった。
南方出身の者たちが普通に買っていくらしい。
ついでに他の穀物を見ていると、小豆を見つけた。
ぜんざいや汁粉もいいし、餡子にしてドラ焼きやまんじゅうに入れても
いいだろう。
もちろん、買う。
あ、でも西洋人は餡子が苦手な人が多いと聞いたことが・・・。
まあ、試してみればいいか。
米と小豆をゲットしたリョウは、上機嫌で他の店に行くのであった。




