105 グレイシア
リョウはダブルネックリュートを存分に弾きこなし歌った。
弾くのが速すぎて逆にゆっくり弾いているように見えるほどであった(笑)。
聞くだけでは我慢の出来なくなったカナーリオがピアノを弾いて、
さらに盛り上がった。
ナミカにリクエストされ、愛の歌をマーティアにむけて歌う。
聖女様、顔真っ赤である。
「俺は不死身だ~♪敵う者なんかいないぜ~♪」
グラダインには、ダークヒーローの歌がうけていた。
結局、30分以上歌ってしまった。教会のほうは大丈夫なのかと聞くと、
あっちでは数分しかたってないようにしておくとのことだ。
リサイタルも終り、改めて話をする。
「カナーリオ様、それで私は何をすればいいのでしょうか?」
リョウが聞く。
「何もしなくていいわよ」
「え?!」
「とりあえず今までのように皆の前で歌ったりして、音楽のすばらしさを
伝えてもらえればいいわ。そのうち、コンサートやったり歌劇団なんかを
作ってミュージカルとかやってもらいたいけどね」
なぜかそのとき、リョウの頭の中には少女たちを率いて、スチームパンクな
ロボットに乗って戦っている自分がいた。
バックに、『王国歌劇団~♪』というメロディーが流れている。
「それじゃ今回はこれでいいかの。リョウ、マーティアのことを頼むの」
ライゼンが言う。
やはり聖女で加護を与えただけあって、マーティアは特別なようだ。
「はい、お任せください。では失礼します」
リョウが力強く答える。
「皆様、失礼します」
マーティアも挨拶をする。
神様たちも別れの挨拶をした後、浮遊感とともに教会に2人は戻った。
そして、応接間に戻り話をしている。
「本当に触らせなくていいんだな?!」
逃げていた褐色女も連れ戻されていた。
名前はグレイシアだそうだ。
「本当です。あのときは酔ってたもので・・・すみませんでした」
リョウが頭を下げ謝る。
「そ、そ、そうか。なら、いいんだ。それにしても何で俺の腹筋なんかを・・・」
グレイシアが、ほっとして言う。
「キレイだからに決まってるじゃないですか」
当たり前のことのように言うリョウ。
「え?!!!」
「褐色の肌にクッキリと浮き出る鍛えられた腹筋、ステキですよね?!」
「「え、ええ・・・」」
リョウの熱意に押され、マーティアとコリーヌ、微妙な同意をする。
「もちろん腹筋だけじゃなく、その凛々(りり)しい顔立ちもステキですし、
上腕や太ももも・・・ん?!」
熱弁するリョウがあることに気づく。
「ど、どうした?」
褒め殺し状態で顔を赤くしている(肌の色のせいで微妙にわかりづらいが)
グレイシアが聞く。
「太もも、触ってもいいですか?」
リョウが真面目な顔で言う。
「お前!!今度は・・・」
「いえ、傷跡があったもので、治したいと」
「「「 え?!!! 」」」
3人揃って驚く。
「リョウ様、治せるのですか?!」
マーティアが聞く。
「はい、やってもいいですか?」
マーティアがグレイシアに目配せをする。
「ああ、やってくれ」
同意するグレイシア。
グレイシアの右の太ももにある刃物で切られたような10cmほどの傷跡に
右手をあてるリョウ。
「ヒール」
光が患部を覆い、その光が消えると傷跡はなくなっていた。
「「「 !!!! 」」」
「どうでしょう?」
リョウは、グレイシアを見上げながら言う。
「あ、ああ・・・」
右足を上げ下げしたり、屈伸したりして確かめるグレイシア。
戦闘にはほとんど影響はないが、この傷跡のせいで日常生活では
微妙にひきつれた感じがしていたのだ。
それがなくなっていた。
「大丈夫だ。ありがとう」
赤い顔でグレイシアが言う。
「リョウ様!!」
マーティアが興奮してリョウの手をとる。
「その御技、ぜひ伝授してください!!」
リョウを呼んで本当によかったと思うマーティアであった。
グレイシアはぜひ赤いロボットに・・・w




