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104 技芸神

リョウは加護やスキルを調べる部屋に来ていた。


本来なら専門の神官が担当するのだが、秘密にしたいと申し出たため、

マーティアが調べることになった。

コリーヌは、ドアの外で見張りである。


「その石版に手をあててください」


マーティアの指示に従って、台の上にある2枚の石版にそれぞれ

左右の手のひらをあてる。すると、台に固定されている水晶玉が

光りはじめ、中に模様が浮かび上がった。


「え!!加護が3つ!!!」

マーティアが驚く。


「3つ?!」

リョウも驚く。ライゼンとグラダインから加護をもらっているだろうとは

思っていたが、あと1つはどういうことだろう。


そのとき2人は、マーティアには覚えのある、リョウには初めての

浮遊感を感じた。


そして浮遊感がなくなった後、目の前にはライゼンたちがいた。


「遅いわよ!2週間近くも教会に来ないとは思わなかったわ」

見たことのないオネエっぽい派手な服を着た男が言った。

ヒゲのないサルバドール・ダリみたいな感じである。


「どちら様でしょうか?」

いきなり文句を言われる覚えはないが、ライゼンと一緒にいるということは

神様なのだろうから、下手にでるリョウ。


「こやつは技芸神のカナーリオじゃ。まあ、とりあえずお座り。

マーティアもな」

ライゼンがリョウたちに言う。


挨拶をして座る2人。


「技芸というと、工芸や芸事のことですよね?!」

リョウがカナーリオに聞く。


「そうよ、あなたの役目は文明をちょっとだけ進めることでしょ。

なのに、最も文化的なあたしが仲間はずれっておかしいでしょ!

まあ、あなたのせいじゃないんだけど」

そう言ってライゼンを見るカナーリオ。


「いや、初めての試みじゃから、まずはリョウがこの世界に慣れることを

優先したのじゃ。いきなり、神たちにいろいろ頼まれても困るじゃろ」

ライゼンが言い訳をする。


「俺もモンスターに襲われてあっさり死んだりしたらまずいと・・・

まあ、ちょっと鍛えすぎたが。わっはっは・・・」

グラダイン、あまり悪いと思ってないようだ。


「『わっはっは』じゃないわよ。それでも、説明ぐらいしてくれてても

いいじゃない?!ねぇ!」


リョウは同意を求められてもどうしようもないので、とりあえず

うなづいてみたが・・・

「あ!!もしかして、歌が上手くなってたり、楽器が弾けるようになったのは?!」


「あたしの加護のお・か・げ!」

自慢げに言うカナーリオ。


「あんたのせいか~~~~!!!!」


「ステキだったでしょ?!」


「え?!」


「楽しかったでしょ?!」


「は?!」


「音楽っていいものでしょ?!」


「は、はい・・・確かに・・・」


少し操られる感じに違和感はあったが、たしかに歌っているときや

演奏しているときは楽しかったし、聞いた者たちも喜んでくれた。


「・・・・・・」

リョウはカナーリオをじっと見つめ、


「カナーリオ様、加護をありがとうございます」

頭を下げ、礼を言う。


「あら!いい子ね。素直な子は大好きよ。これを用意した甲斐があったわ」

そう言って、カナーリオはリュートを取り出したが、形が少し変である。


「これは?」


「あなたの世界の楽器、ダブルネックギターを参考に作ったダブルネック

リュートよ」


ダブルネック、そうそれには弦を張るネックが2つあった。


「要するに、リードギターとベースギターを合体させた物のリュート版ね。

銘は剛斬丸と同じ和風で、『青山』(せいざん)とつけたわ」


「どういう意味です?」


「ニホンの似たような楽器についてた名前からとってみたわ」


(分け入ったりしないのか・・・)

などとわけのわからないことを考えるリョウ。


「まあ、とにかく弾いてみてよ」


「わかりました」


今回のリョウのリサイタル場所は、なんと神界ということになってしまった。

というわけで、29話で覗いていたのは技芸神でした。

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