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夢見る少女

作者: 原案木内 原作星河

私は人間になりたかった。

皆私を見ると怯え、祟りだと言われた。




私は山奥で独り、暮らしていた。

人目を避け数百年孤独に生きてきた。


そんな時に尋ね人が現れた。

「もしもし、蛇女というのは貴女ですか?」

突然だった。


「だったらどうしたというのですか?」

「私は闇払いの者です。貴女を治せるかもしれません」

すると私は無性に頭にきた。

「私は病気などではありません。お帰り下さい」

すると男は首を振った。


「私はある方から貴女の奇病を治すように言われたのです。貴女は人間になりたいとある人に言ったことはないですか?」

私は考えた。一つ思い当たる節がある。






それは六十八年も前の事だ。


私は頭を布で隠して町に出ていた。


数年振りの町に私は活き活きとしていた。

食べ物を買い、洋服を買い、町を散策していたらある寺に辿り着いた。

そこはまるで現代とは切り離されたかのような古風な作りだった。


そんな中に迷い込んでお堂の中に入り込んでしまった。


「誰だ?」

お堂の奥で声がした。

すると男がやってきて私を見た。


「貴女は誰ですか? 何故ここへ? その頭の布は何ですか?」

「質問攻めね」

「失礼。貴女があまりにも美しかったからつい」

「私が美しい?」

「ええ。とても」

私にとって初めての言葉だった。

嬉しかった。気付いたら私はこの人を好きになっていた。

でもそんな事は許されない。

私は化け物なのだから。


「もし宜しければその布を取って頂けませんか? もっと貴女の事が知りたい」

「いけません!」

「何故ですか?」

「これを取ってしまえば貴方はきっと去ってしまう」

「どんな事があっても去りません」

私は何を考えていたのか言われるがまま布を取ってしまった。

私の頭からは二本の蛇が姿を見せていた。

そしてコンタクトも外した。

私はオッドアイだ。

これで私はまた忌み嫌われてしまう。



ところがその人は違った。

「なんて綺麗なんだ--。その瞳も。でもその髪の毛はどうしたのですか? 呪いか何かですか?」

この人は憎悪というものを知らないのか。

そんな言葉が浮かんだ。


「これは奇病です。私は何百年も生きています。最初は友もいたのですが段々と私のそばを離れていきました。この頭のせいで......。それから私は人里離れた山奥で独り暮らすようになりました」

私はありのままを話した。この人に嫌われようとも。



「私が治す方法を見つけ出す。きっと。いや、必ず見つけ出す。そうしたらもう貴女は独りじゃない。いや、もう貴女は独りじゃない。私がいる。私が友になり、家族になる。私と一緒に暮らしてみないか?」

私は涙が溢れ出した。

こんなに優しい人に初めて出会えた。

でも......。


「私は山に帰ります。貴方に迷惑はかけられないです。さようなら。ありがとう」

私は走って寺を出た。

辺りはすっかり暗くなっていた。

涙を流しながら山へ戻っていった。






これが唯一私が自分自身の話をした記憶。

それを話すと男は

「その方から依頼を受けてきました。貴女をきっと治してみせます」

涙をグッと堪え、返事をした。

「お願いします......」





治療は一週間を要した。

多種多様な薬を蛇に塗り込み、飲み薬を飲み、治療を続けた。

そして一週間後......。

鏡を見ると蛇がいなくなっていた。

オッドアイだけはどうしようもないと言われた。

そんな事は構わない。

早くあの人に会いたい。



「本当にありがとうございます」

「いいえ、仕事ですから。さぁ町へ行きなさい」

返事もせずに走って寺を目指した。

今は何もかもどうだって良い。

ただあの人に会いたい。





寺に着いた。

あの日と変わらない。

私はお堂に入った。


「もしもし! 貴方はどこですか?」

すると男性が一人やって来た。

私の顔を見て頷いた。

「こちらへどうぞ」

付いていくとそこにはしわくちゃのお爺さんが布団に寝ていた。

すぐに分かったあの人だと。

私の時間は止まっていたけどこの人の時間は動いていた。



「おじいちゃん、例の方が来たよ」

男性がそう言うとお爺さんはゆっくりこちらを向いて笑顔を見せた。


「私の名前はミル。貴方の名前は?」

「私は誠一。ミル、約束通り君を治す術を見つけて治してもらったよ」

「うん! ありがとう誠一さん」

私は涙交じりの笑顔で誠一さんを見つめた。

誠一さんもとびきりの笑顔を私にくれた。

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