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第8話 「運命の旅人」と「恋人の魔法」
世界をひととおり見回してもどうやら人生は運命論でしかなくて、飛行船が飛んでいるこんな時代でも気付きたくないほどに世界は公平ではないことに気付いてしまい、もう全ては風の吹き回しだからと何も考えたくなくなってしまっても、橋の上で恋人たちは再会して、道端に落ちている銅貨をネコは眺め、お人好しなあの子は今日も幸せを祈られて、ジュゴンはだらしのない姿で橋の下で眠り続けーー。
「おかしいなぁ。確かにどの新聞にもいかにも面倒臭そうな人たちの物語は乗っているんだけど、肝心なぼくの事が一言も書かれていない。野菜泥棒以下なんだってさ、ぼくは。こんな感想が正しいのかはわからないけど、なんだか悲しくなるよね?」
「??? もしかしてパパリアンはみんなから忘れられちゃったのかな?」
「それだけだといいんだけど、本当はもっとうんざりする何かなんだろうねぇ」