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第17話 「理想の観測」と「希望の秩序」 

 もちろん桜雪ちゃんや冬音ちゃんと再会をするためには、様々な選択肢の可能性を考えることができたのでしょうが、やっぱり瑞葉くんならそんな中でも愛鈴が「???」となるようなものを選んでくれたということなのです。距離的に最も近かった桜雪ちゃんや風歌ちゃんを中心に考えることはもちろんわかりましたし、本来ならそうするべきなのでしょうが、瑞葉くんはそのような考えを含めてなおも予想外な候補地ーーつまりこの空汽車の街ーーへと向かうことを決めてくれたのでした。


 実は愛鈴たちにとっては桜雪ちゃんと風歌ちゃんの居場所から離れてしまったのです。桜雪ちゃんや風歌ちゃんと会おうという話をしているのに。何を考えているんでしょうか。何も考えていないんでしょうか。瑞葉くんには”桜雪ちゃんや風歌なら、智夏ちゃんや冬音ちゃんのいるところにも交通手段が整っているこの街にも絶対に来てくれるよ!”という驚いてしまうほどの希望的な観測があるようでしたが。


「でもさ愛鈴くん? そもそもなんだかおかしいよね? あの奈季くんが愛鈴くんを不安にさせちゃうことだけを伝えてくれるなんてさ。そもそも奈季くんならもしもそこまで知ることができていたなら、逆に愛鈴くんには隠してくれそうなのに」


「嫌がらせなんじゃないのぼくへの。上げてから落とすみたいな感じでさ」


「う〜ん。でもなんだかんだ言っても奈季くんはそういう事はしない人でしょ?」


 空から溢れ落ちるパズル。何かが間違っている話。理想への質感。泡のような秩序と塔の上の祈り。なかなか理解できそうもない場面の前に置かれたままの扉。


 どうやらまだ時間はあったようでした。桜雪ちゃんや風歌ちゃんがいるかもしれない都市から蒸気を吹き上げて来る空汽車が到着するまでは。まぁそもそも桜雪ちゃんや風歌ちゃんが次の列車に乗っているのかも、本当にふたりがこの街に訪れてくれるのかということもわかりませんが。愛鈴は光と闇の電灯の下にある長椅子に、先ほどの歩く魚さんにオレンジを食べさせてあげている月葉ちゃんと一緒に落ち着いて座っていましたが、なんだか瑞葉くんは落ち着きがなさそうに歩き回っていたのです。奈季くんのことはもちろん、愛鈴の周りのことを考えて何かが引っかかっり初めてくれているのでしょうか? そんな瑞葉くんのことを月葉ちゃんと同じく楽しそうに瞳で追っていると、愛鈴も楽しい気分にはなりましたがーー、


 ”そんなにうろちょろしていると、まずは足元を引っ掛けてつまずいちゃうだろ”


 と愛鈴が気を付けてあげようとすると、そんな言葉を届けようとする少し前に、路地の短い階段に足を取られ綺麗に落ちていった瑞葉くんはもう風物詩でした。

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