第16話 「約束の偶然」と「物語の未来」
知らない人と知らない人が交わるところで、愛鈴は現実と現実のビリヤードをしていました。約束さえもない未来。数さえもない方程式。どうしたら絵のような答えを見つけることができるのでしょう。海の上のオーケストラや電話ボックスの影を通り過ぎる日傘の下のイデオロギー、さらには静かな美しさを感じさせる路辺ーーは空汽車が上空を飛ぶ風の通り道の都市でしたが、もしもこの街の偶然の意味も”広告の前で踊る失業者”と”すぐそこにいる歩く魚”ならば、愛鈴にとってすぐに指差してもらいたい最後も”春の終わりに降る雪のような物語”だと笑われているようでした。
もちろん愛鈴にとっても理由はありました。瑞葉くんにこれからのことをお願いしたことへの。愛鈴としては気になっていたのです。明らかに不自然である今の自分を取り巻いている状況が、”もしかしたら自らの思考が誰かにトレースされてしまっている”のか、それとも本当は”何かまた別の理由があるのか”ということを。
でもそうして瑞葉くんが選んでくれた答え。
たぶんそれはいい意味で愛鈴にとっても願い通りのものでした。
各地方からの空汽車の到着時間を調べに瑞葉くんが駅舎へと行ってくれている中で、せわしないばかりであまり楽しい思い出も月葉ちゃんにはさせられてあげていないので、愛鈴は月葉ちゃんと手を繋いだまま街中を散策してあげていました。
「わお。この歩くお魚さんは賢いねぇ。ぼくたちが旅人だってことに気づいてさ、何か食べ物をくれるだろうと思って、ぼくたちのあとを付いて来ているのかな?」
「ーーこの子にさあの果物屋さんで何か買ってあげてもいいパパリアン?」
「いいよ。でもパパリアンはお金がないからミズハーンが来るまで待ってね?」