第15話 「魔法の理想」と「透明の手品」
虚構よりも虚構にみえるような小さな村。気の抜けている時の流れ。いきなり広場で始まった手品の説明。どこか生焼けのままのパンケーキ。考え方のアタラクシア。解読できない領域。取り戻せないままの理想の続き。心に浮かんだ透明の鍵。
「……でもさ愛鈴くん。もしも僕のファンの人があの本を拾っちゃってさ、もしもそれを愛鈴くんを困らせようとしている人たちに渡しちゃったりしたらーー」
「まぁそんなことをしちゃう人をファンと呼ぶべきかはそもそも疑問だけどね」
愛鈴の周りで何が起きているのか。何が起きようとしているのか。どうやら瑞葉くんだからこそそんな事も誰よりも確かめようとしてくれていたようですが、あの瑞葉くんだからこそまずは愛鈴がユフィリアたちと再会できることをもっとも大切に考えてくれていたようで、瑞葉くんはただこの世界を楽しむように遊び回っていただけでなくその可能性を探ってくれていたようですが、そうして居場所を予想してくれた本を瑞葉くんはいつのまにか鞄の中から無くしてしまったというのです。
どれだけ鞄の中を探してもその本がみつかることがなかった瑞葉くんはもう大好きなお喋りもしなくなりそうなほどに落ち込んでいますが、”誰よりも優しい笑顔でその本を愛鈴に渡そうとしてくれた瑞葉くん”と”その本をどこかに無くしてしまった瑞葉くん”のギャップがあまりにも愉快過ぎた愛鈴は笑い転げる中でーー、
「むぅ。でもさパパリアンパパリアン。ママリアンもさゆちゃんもふゆちゃんも、みんないるかもしれない所がとても離れているけど、どうするのパパリアンは?」
「パパリアンとしてはあれだよね。やっぱり桜雪ちゃんたちを優先するのか、冬音ちゃんと智夏ちゃんたちを優先するのかで悩むよね。ママリアンはもう論外でさ」
「??? どうしてさパパリアンはママリアンのことは考えてあげないの?」
「それがママリアンとパパリアンにとっての手品だからかな。ーーまぁそれはもちろん冗談だけどね。あとで月葉ちゃんにはその手品の種も教えてあげるね?」
瑞葉くんがまた新たに魔法で作り直してくれた地図の本をみさせてもらいながらも、未だに瑞葉くんが面白くて機嫌がいいのか、それとも何かいい事でもあったように愛鈴からはなぜか悲観的な様子が感じられるようなこともない中でーー、
「まぁそれでさ瑞葉はどう思うのよ。ーー瑞葉だったらこれからどうする?」