第14話「絵画の階段」と「偶然の世界」
自分の知らないところでも予想外に世界は動くようでした。龍の小さな子供たちが道なき森林を元気に走ります。彼らの飼い主の少女としては”運搬料としてもらったお金”を彼らの養育費にするために。とても笑顔の少女と龍たちを眺める月葉ちゃんと青年2人はトロッコに乗せられ引っ張られていましたが、純白とも呼べるほどに美しい髪色をする愛鈴は”なぜか美術館の絵画の前で笑顔でピースをしていた”り、”羊のような毛をする巨大な鳥には熱気球をなぜか本気で追いかけられていた”り、”新しい皇女の即位に喜ぶ広場の民衆にもなぜか偶然に混じっていて、誰よりも嬉しそうに喜んでいた”りして、それぞれの場面が見事に新聞の一面になっていた、いつも通りの友人に微笑みという贈り物をもらっていたのかもしれません。
「なんかここまできたらすごいなぁ。逆に瑞葉を尊敬するよ。あまりにも予想を裏切られなくてさ。ーーまぁだからほかにやる事はなかったのかよとは思うんだけど」
「ひど~い愛鈴くん! これはあれだよ? 愛鈴くんと早く会いたいなぁって思いが心の奥にはあったから、こんなにも多くの新聞にも載せてもらえたんだよ!」
「でもそんな瑞葉もぼくの迷い鳥のような寂しさには気付かないままだったんだ」
「えぇ! そんな悲しいことは言わないでよ愛鈴くん! 実はね僕はね愛鈴くんと月葉ちゃんのためにってね、この新聞記事がプリントされてるTシャツも作ってきてあげたんだよ! はいっ愛鈴くんと月葉ちゃん! もしもよかったらどうぞ!」
この3人組は本当に楽しそうでした。被害者のいない大爆発を瑞葉くんが街中へと起こしてくれたおかげで先ほどは逃亡の手助けをしてもらったというのはもちろん、この時も愛鈴には”奈季くんが戻ってくれた時のような感覚”があったから。
「でもさパパリアンパパリアン? ミズハーンならさあのこともわかるよね?」
「確かにね。ぼくもささっきから雲のように流れていく蜃気楼のような架空の中でも、予感の階段を上っているような気がするんだ。それはもちろんいい意味でね」